写真●日立製作所 RAIDシステム事業部 事業企画本部 製品企画部の田渕英夫・主任技師
写真●日立製作所 RAIDシステム事業部 事業企画本部 製品企画部の田渕英夫・主任技師
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 「様々なベンダーのデバイスを含めて,ストレージをまとめて仮想化できる。これにより,既存ストレージ資産の有効活用が可能になる」。日立製作所 RAIDシステム事業部 事業企画本部 製品企画部の田渕英夫主任技師(写真)は,2008年4月25日に開催された「仮想化フォーラム 2008」で講演し,同社の仮想化ストレージ・ソリューションのメリットを説明した。

 田渕氏が講演したのは,同社のストレージ・ソリューション・コンセプトの「Services Oriented Storage Solutions」について。同ソリューションは,複数のストレージ装置を仮想化してまとめることで,業務別に分かれた各サーバーが使いたいときに使いたい容量のストレージを利用できるというものである。田渕氏はまず,このソリューションを支える同社の独自技術である「Hitachi Dynamic Provisioning」(HDP)と「Hitachi Universal Volume Manager」(HUVM)について解説した。

自社製品も他社製品も外部ストレージをまとめて仮想化

 HDPは,業務アプリケーションに割り当てるボリューム容量の仮想化を実現する技術。複数のストレージ装置から成る物理的な記憶容量を,まとめて大きな「プール」として管理し,ストレージを使う業務システムには容量を自由に設定できる「仮想ボリューム」として認識させるというものだ。プールでまとめて管理することの大きなメリットの一つは,別の業務サーバーから利用できない「割り当て済み未使用容量」をなくすことができること。「これにより未使用容量の有効利用が実現し,ストレージの投資コストの最適化が図れるようになる」(田渕氏)。

 一方のHUVMは,他ベンダー製のストレージ装置を含めて,すべての外部ストレージをファイバ・チャネル(FC)で接続し,日立のディスクアレイシステムのリソースとして一元管理する仮想化技術。「ユーザーが既に持っているストレージ資産も有効活用できるため,投資コストを抑えられる」(田渕氏)。さらに,データの価値に応じて,適切なストレージにデータを配置することもできるという。「高い性能が要求されるデータは高性能なストレージに配置し,時間がたってあまりアクセスされなくなったデータは低コストのストレージに移動させる,といった柔軟な運用が可能。運用面のコストも低減できる」(田渕氏)。

 続いて田渕氏は,2008年3月25日に日本オラクルとともに発表した「BCMベストプラクティス」について紹介した(関連記事)。これは,日立製のストレージとオラクル製のデータベース・ソフト「Oracle Database 11g」を組み合わせた場合の動作検証結果を公開したもの。田渕氏によると,日立製ディスクアレイ「Hitachi Universal Storage Platform V」のHDP機能と,オラクルの「Oracle Automatic Storage Management」を連携させることで,複雑なストレージのチューニング作業なしに,性能が向上したという。具体的には,手作業のチューニングで実現した最適構成時のパフォーマンスを100とすると,HDPではプール設定を施しただけで94.1の性能が実現できたとする。

4割以上,消費電力を削減できるという試算も

 最後に田渕氏は,ストレージ仮想化による省電力化にも言及した。HDPを使った場合は,未使用容量を最小限に抑えることができるため,従来よりも物理的なストレージ導入容量が少なくて済み,結果的に消費電力の低減が図れるのだという。

 また,「MAID(Massive Array of Idle Disks)機能を併用することで,さらなる省電力化も実現する」(田渕氏)。MAIDとは,長時間アクセスしないハードディスク・ドライブ(HDD)群のドライブ回転を停止させ,HDDごとに消費電力を削減する技術。田渕氏は,3世代・各10テラバイトのディスク・ツー・ディスク(D2D)バックアップを行う場合の,消費電力の削減効果を説明した。具体的には,すべて高性能なFC HDDに保存する場合に比べて,「1世代を高性能FC HDD,2~3世代をMAID機能付き大容量シリアルATA(SATA)HDDに保存して1日当たり6時間だけドライブを回転させるという設定にした場合は,消費電力を42%削減できるという試算になった」(同)としている。