日立製作所 エンタープライズサーバ事業部開発本部第三部の庄山貴彦部長
日立製作所 エンタープライズサーバ事業部開発本部第三部の庄山貴彦部長
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 「仮想化技術には情報システムを一変させるだけの力がある。しかし、まだ仮想化技術に対して不安を感じるユーザーは少なくない」――。日立製作所 エンタープライズサーバ事業部開発本部第三部の庄山貴彦部長は、2008年4月25日に開催された「仮想化フォーラム 2008」の講演で、仮想化技術の現状をこのように分析した(写真)。

 庄山氏によると、ユーザーが不安を感じる点は大きく4つあるという。(1)信頼性が低下しないか、(2)実用に足る性能は確保できるか、(3)既存アプリケーションは動作するのか、(4)TCO削減につながるのか、である。

 (1)の信頼性について、庄山氏は「あまり心配する必要はない」という。「仮想化ソフトのハイパーバイザーは、それほど難しい処理をしているわけではない。それに、仮想化自体は、メインフレームでは当たり前の技術で、未知のものというわけではない」。

 (2)の性能については、「仮想化技術のベンダーやシステム・インテグレータと一緒に見積もるべきだ」と、安易な設計を戒める。「アプリケーションを通常のOSで動かす場合と、ハイパーバイザー上で動かす場合とでは、異なる性能特性が現れる可能性がある」(庄山氏)。

 特に、入出力処理が多いアプリケーションや、プロセスの切り替え頻度が高いアプリケーションが要注意だという。「これらはOSだけが実行できる特権命令を含む。仮想化技術では、ハイパーバイザーがこれらの特権命令をエミュレートする際にオーバーヘッドが現れやすい」(庄山氏)。

事前の十分な検証が必要

 (3)アプリケーションの互換性については、独自のデバイス・ドライバを使うものや、直接ハードウエアを操作するものについては、ハイパーバイザー上では動かない可能性がある。

 最後に、(4)TCO削減について庄山氏は、「仮想化ソフトのライセンスやサポート費、システム構築費は増える。ハイパーバイザー上で動かすソフトウエアは仮想化技術を使った場合のライセンスが不明なものも多い。ハードウエアのコスト削減だけに目を向けるのではなく、運用のコストや、システムのライフサイクル全体を踏まえてコストを算出すべきだ」という。

 庄山氏自身、これまで苦労した経験も少なくないという。ある案件で、2プロセサ構成のサーバー上で動作してるシステムを、4プロセサで動作する仮想マシンに移したところ、性能が極端に低下した。調査したところ、アプリケーションが2プロセサ構成に最適化されており、仮想環境でなくても4プロセサ構成では性能が劣化する仕様だったという。

 「事前に十分検証すれば、不安は取り除ける。今後,仮想化技術の採用はメインストリームになる。前向きに仮想化に取り組んでほしい」と、庄山氏は述べた。