写真●NTTデータとマイクロソフトが開発した手荷物管理システムのプロトタイプ
写真●NTTデータとマイクロソフトが開発した手荷物管理システムのプロトタイプ
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 NTTデータとマイクロソフトは2008年4月23日、異なる企業間で連携しながらRFID(ICタグ)を使えるようにする管理システムを開発したと発表した。同時に、この技術を利用して、旅行客が航空会社、空港宅配会社、宅配会社を任意に組み合わせられる手荷物管理システムのプロトタイプを開発したことも発表した。システムは、国土交通省所管の認可法人、次世代空港システム技術研究組合の「次世代手荷物管理システム研究モデル」に基づくもの。

 新システムの狙いは、一つの製品・配送物に対して複数の企業がかかわるような場合においても、RFIDを採用しやすくすることにある。例えば航空機の手荷物管理では、航空会社、空港宅配会社、宅配会社で様々な組み合わせがある。従来のRFID管理システムは、「各企業が保有する既存の管理システムとの連携が煩雑なため、1社で完結させるか、特定の企業間のみのやり取りに使うのが一般的だった」(NTTデータ技術開発本部の村上明彦SIアーキテクチャ開発センタ部長)という。

 新システムは、マイクロソフトの業務システムを連携させるサーバー製品「BizTalk Server 2006 R2」と「BizTalk RFID」と、NTTデータのID管理システム「IDコマース基盤システム」を利用することで、連携の煩雑さを解消した。BizTalk製品群は、RFIDのタグやリーダーといったハードウエアの違いを吸収する。

 一方、IDコマース基盤システムは、IDのフォーマットを変換する役割を果たす。手荷物管理システムでは航空会社、空港宅配会社、宅配会社それぞれが持つ管理システムに合わせて、IDコマース基盤システムがIDフォーマットを変換する。これにより、異なる会社が一つのRFIDを使って手荷物を管理できるようにしている。

 なお、エンドユーザーには「RFIDトークン」と呼ぶIDが通知される。これがタグを特定する一意のIDとなり、これを利用することで荷物がどこにあるのかをエンドユーザーが追跡できる(写真)。

 NTTデータとマイクロソフトは、今回開発したRFID管理システムを様々な業種に売り込んでいくという。想定されるユーザーとしては「まだ相手と話をしている段階ではないが、安全性が注目されている食品業界などが考えられる。小売りや卸、生産者など様々な企業がかかわるため、新システムが生かせるのではないか」(NTTデータ基盤システム事業本部の高橋成文・企画部長)と見る。

 ただし、「今回の手荷物管理システムのプロトタイプは、技術面の実現可能性の検証が目的。費用対効果などの検討はしていない」(NTTデータの高橋部長)としており、今後は導入効果のアピールが必要になる。マイクロソフトサーバープラットフォームビジネス本部アプリケーションプラットフォーム製品部の荒井俊貴エグゼクティブプロダクトマネージャは、「ユーザー側で可視化する仕組みをどう作るかが、導入効果を出す上でのポイントになるだろう」とした。