2008年4月22日に総務省の「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」の第12回会合が公開の形で開催された。今回の会合では,事務局から論点整理の案が示され,それに沿う形で議論が進められた。ただし,焦点となっていた「ハードとソフトは一致なのか分離なのか」,「技術方式を統一するのかしないのか」という問題については結論が出ず,次回の会合(5月20日開催予定)に持ち越しとなった。

 この懇談会は,地上アナログ放送の終了によって空く周波数のうちVHF帯の32.5MHz幅の用途や枠組みを検討している。今回の会合では,「デジタル新型コミュニティー放送」,「全国向けマルチメディア放送」,「地方ブロック向けデジタルラジオ放送」に類型することや,「全国向けマルチメディア放送をVHF帯ハイバンド,地方ブロック向けデジタルラジオ放送をVHF帯ローバンド,デジタル新型コミュニティー放送は地方ブロック向けデジタルラジオ放送のアンダーレイとして実用化を図る」ことなどについて特に異論は出なかった。ハード事業者(この場合のハード事業者は,ハードとソフトの分離を前提にはしていない)の数については,地方ブロック向けデジタルラジオ放送は一つとする方向が示された。

 意見が大きく分かれたのは,全国向けマルチメディア放送に関するハード事業者の数や,技術方式の統一に関する議論である。これらについて,事務局が配布した論点整理案では,それぞれのメリットとデメリットを記載した形となった。ハード事業者の数について一つにした場合(技術方式は一つとなる)は,設備投資が少なく,ガードバンドが不要になるため周波数の有効利用も図れるが,競争促進が生まれない。一方,ハード事業者の数を二つにすると(技術方式は一つあるいは複数),二重投資になり,周波数の有効利用の観点からも劣る選択肢だが,競争促進効果が期待できる。

 技術方式については,一つに絞った場合の利点として,一つの受信機ですべての事業者の放送を受信できることを理由に受信機の普及の確保を挙げた。事業者の自由度の確保の観点からは複数方式の選択する方が利点があるとした。

 委員同士の議論でも,主要テーマは技術方式の統一の是非だった。「放送であるならば,技術方式は統一すべきである」,「無料放送は当然そうあるべきだが,有料放送は議論が違うのではないか」など激しいやりとりが繰り返されたが,結論は出なかった。