2008年4月21日,情報通信審議会 情報通信技術審議会 携帯電話等周波数有効利用方策委員会の第29回会合が開催された。同日の会合では,3.9G(第3.9世代移動体通信)システムの技術的条件に関する調査の開始に加えて,「HSPA+」の実用化に向けて技術的条件の検討を開始することが了承された。

 HSPA+は,HSPAにおける送信シンボルを多値化することでより高速な無線データ通信を可能とする方式。現行のHSPAは下りでは16値QAMを使って約14Mb/s,上りでQPSKを使って約5.8Mb/sを実現しているのに対し,HSPA+では下りに64値QAMを使って約22Mb/s,上りは16値QAMを使って約12Mb/sへ高速化を図る。

 HSPA+の検討開始は,同委員会の下に設置された2GHz帯TDD方式技術検討委員会に参加する携帯電話事業者から提案があったためと説明する。TDD方式委員会は,2GHz帯を使ったTDD方式の検討以外の適宜審議内容に加えることになっていた。今回の提案者はイー・モバイル,NTTドコモ,ソフトバンクモバイルの3社である。

 今後は,2008年夏をメドに「2Gz帯におけるTDD方式を活用した移動体通信システムの技術的条件」がまとめられることなっており,この中に,HSPA+に関する技術的条件を盛り込む。これを受けて告示の改正案をまとめた後,パブリックコメントを経て,実用化に向けた制度上の準備が整う。

 また4月21日の会合では,3.9Gシステムの技術的条件に関する調査に向けて,IMT2000高度化作業班の設置が決まった。2010年頃の実用化を念頭におく。現行の携帯電話で利用されている周波数(800MHz帯,1.5GHz帯,1.7GHz帯,2GHz)すべてを対象にする。なお,700MHz/900MHz帯については,700MHz帯に相当するUHF帯の利用が2012年7月以降(地上デジタル放送のいわゆるチャンネルリパッキングの後)に可能となるといった理由のため,今回の検討には含めない。7月までに基本コンセプト(利用イメージ,システムの機能,干渉条件,送受信間隔など)をまとめる。その後,既存システムとの共用条件や必要な技術条件および運用条件,4G(第4世代移動通信)システムへの円滑な展開に向けた技術的方策などを検討し,2008年12月頃に情報通信技術分科会に結論を報告するである。

 2GHz利用のTDD方式については,他システムとの共用検討の結果が報告された。対象は,モバイルWiMAXやIEEE802.20 625k-MC,次世代PHS,UMB-TDD,LTE TDDである。いずれも,フィルターを使ったり,基地局を適切に配置したりすることで,共用が可能という。