ECS製のAMD 780G搭載ボードのBIOS設定画面。CPUの動作周波数の上限と、コア電圧をPhenom X4 9150e相当に変更した
ECS製のAMD 780G搭載ボードのBIOS設定画面。CPUの動作周波数の上限と、コア電圧をPhenom X4 9150e相当に変更した
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設定変更後の情報表示ユーティリティー「AMD OverDrive」の画面。動作周波数は1.8GHz、HyperTransportも1.8GHz、電圧は1.07Vとなっている
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【グラフ1】「CINEBENCH R10」における1コアでの演算結果。9150e相当の結果は、Phenom 9600と比べて妥当な値になっている
【グラフ1】「CINEBENCH R10」における1コアでの演算結果。9150e相当の結果は、Phenom 9600と比べて妥当な値になっている
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【グラフ2】CINEBENCH R10における複数コアでの演算結果。クアッドコアCPUのスコアがデュアルコアCPUより高くなる
【グラフ2】CINEBENCH R10における複数コアでの演算結果。クアッドコアCPUのスコアがデュアルコアCPUより高くなる
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【グラフ3】「PCMark05」のCPU関連テストの結果。コア数があまり影響しないので、動作周波数の高いデュアルコアが良い成績だ
【グラフ3】「PCMark05」のCPU関連テストの結果。コア数があまり影響しないので、動作周波数の高いデュアルコアが良い成績だ
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【グラフ4】ハイビジョン映像のエンコード処理。9150eは9600と比べて妥当な結果。6000+に比べて明確に速い
【グラフ4】ハイビジョン映像のエンコード処理。9150eは9600と比べて妥当な結果。6000+に比べて明確に速い
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【グラフ5】システム全体の消費電力の比較。負荷時はPCMark05で4スレッドを同時に実行する「Multithreaded Test 2」のときの値。Intelプラットフォームの消費電力の低さが目立つ
【グラフ5】システム全体の消費電力の比較。負荷時はPCMark05で4スレッドを同時に実行する「Multithreaded Test 2」のときの値。Intelプラットフォームの消費電力の低さが目立つ
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 AMDは2008年3月28日、Phenomシリーズの新モデルを発表した。その中に、低消費電力版のクアッドコアCPU、Phenom X4 9100eがある。通常版のPhenom X4 9000シリーズのTDP(Thermal Design Power、熱設計電力)が125Wか95Wなのに対し、9100eは65Wと低い。TDPはPCの冷却機構などを設計するために必要な仕様としての値であり、使用中の消費電力を直接示すものではない(例えばTDP65W版が95W版より常に3割ほど消費電力が低いわけではない)。しかし、一般にTDPの低いCPUは、全般的な消費電力も低い傾向にある。

 IntelはデスクトップPC向けには低消費電力版のクアッドコアCPUをラインアップしておらず(サーバー用はある)、消費電力が低くて静かなクアッドコアPCを作りたいユーザーにとって、Phenom X4 9100eは期待の製品だ。ところが9100eはPCメーカー向けへの出荷のみ。キャッシュ周りの不具合を解消したB3 Steppingの「9150e」になるとみられる、自作PC市場へ向けた単品販売用の製品はいまだ発表されていない。

 そこで今回は、倍率変更可能なPhenom X4のフラッグシップモデル、9850 Black Editionの動作周波数や電圧を変更して「仮想9150e」を作り、性能と消費電力を調べてみた。

 あらかじめお断りしておくが、いくら表面的な仕様をそろえたとはいっても、仮想9150eと本来の9100e/9150eでは消費電力が同一にならないだろう。低消費電力版として出荷するからには、漏れ(リーク)電流が少ないなど消費電力が低めの個体を選別するだろうからだ。今回のテストはあくまでも傾向を見るためのもの。本来の9100e/9150eの消費電力は、今回測定して得られた値よりも低くなるとみられる。ただ、性能は参考になるだろう。9850と9100e/9150eは同じ設計のCPUで動作周波数が違うだけだからだ。

BIOS設定の変更で、1.6GHzの0.90V動作も試した

 動作電圧と周波数はBIOSで設定した。9100eの動作周波数は1.8GHz。HyperTransportは3.6GHz(1.8GHzのDDR)だ。AMDによると動作電圧は1.10/1.125/1.15Vなので、今回は最も低い1.10Vに設定した。このほかの設定は標準のまま。例えば、CPU内部にあるノースブリッジの動作周波数や電圧は9850 BEと同じになっているはずだ。B3 SteppingのCPUなので、以降9150e相当として記述する(9150e自体は発表されていない製品だ)。このほか、限界として1.6GHz、0.90Vでの動作も試した(ただしこのときはHyperTransportが9850と同じ2GHzのまま)。電圧をこれ以上下げると、ベンチマークが異常終了するなどの現象が起こった。

 テストに使用した機材は以下の通りだ。比較のため、Intelプラットフォームでも性能と消費電力を調べている。

【マザーボード】GA-P35-DS3R(GIGABYTE TECHNOLOGY、Intel P35搭載)、A780GM-A(ECS、AMD 780G搭載)
【メモリー】DDR2-800 1GB×2(JEDEC準拠)
【HDD】Deskstar P7K500 500GB(日立グローバルストレージテクノロジーズ)
【OS】Windows Vista Ultimate Service Pack 1 32ビット日本語版

 CPUとして用意したのは、AMDのデュアルコアCPUとして、Athlon 64 X2 5000+(2.6GHz)、同6000+(3GHz)。クアッドコアはPhenom 9600(2.3GHz)と9850 Black Edition(2.5GHz)だ。Intel製CPUは、デュアルコアがCore 2 Duo E8400(3GHz)、クアッドコアがCore 2 Quad Q6600(2.4GHz)、同9300(2.5GHz)、同Q9450相当(2.66GHz)。

 このうちE8400、Q9300、Q9450は最新の45nmプロセスで製造されたCPU。Q6600は旧世代となった65nmプロセス版だ。Q9450が「相当」になっているのは、Core 2 Extreme QX9650(3GHz)の倍率を変更して作り出したため。性能は本来の製品と同じだが、消費電力の傾向は異なる(高めに出る)可能性がある。

 A780GM-AではPhenom 9850 BEが対応CPUとして明記されていない。編集部のこれまでのテストでは、少なくとも数時間単位の稼動ではおかしな挙動がなかったことと、AMD製CPUで省電力PCを組むならAMD 780G搭載製品は外せないことから、今回はそのままテストに使用している。