写真●会場でのデモの様子 右上に見えているのが受信機のアンテナである
写真●会場でのデモの様子 右上に見えているのが受信機のアンテナである
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 米モジックスは2008年4月17日、16日に始まった無線ICタグ専門イベント「RFID Journal LIVE! 2008」において、通常のUHF帯ICタグを180m先からでも読み取れるというシステム「Mojix STAR」をデモしてみせた。電池を持たないUHF帯パッシブ・タグは通常3~5mの通信距離しかない。モジックスは特殊な送信機と受信機を組み合わせることで通信距離を長くした。

 ICタグがリーダーから離れていって通信できなくなるのは、リーダーから受ける電波が弱くなって、ICタグが動作するだけの起電力が得られなくなるからである。リーダーの最大電波出力は、各国の電波法で決められており、最大出力をもってしても、国によって変わるが数mから10mくらい離れるとICタグは起動しなくなる、つまり通信できなくなる。

 それでもMojix STARが180mもの通信距離があるかというと、通常のリーダーの送信機能と受信機能を分離したからである。送信機「eNode」は、対象エリアに大量に設置し、その送信機がICタグを起動するための電波を発射する。そうして起動したICタグと受信機「STAR Receiver」が、「Gen 2」と呼ぶ標準プロトコルを使って通信する。受信機は、1秒間に最大700個のICタグと通信できるという。送信機と受信機は、同軸ケーブルか無線を介して通信する。

 つまりMojixは1台の受信機で、倉庫内など広い範囲に置かれている物に付いたICタグを一度に読める。しかも、30cmの精度で各ICタグの場所を検知できるという。受信機は、電波をワイパーのように振る機能があり、同時に送信機が電波を発射するタイミングも制御する。このため、3次元のICタグの位置を正確に把握できるという。

P&Gなどが試験導入

 この機能により、物流センターでトラックが横付けする数多くのドックドアに届いた商品を一括して読んだり、コンテナ・ヤードなどでコンテナの位置を把握したり、工場内で資産の位置をリアルタイムに把握したりといった用途に適用できる。

 今回のシステムを米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)や米クラフト、米キンバリー・クラークといった大手メーカーが試験導入しているという。明日(18日)には、3社が参加するパネル・ディスカッションが開催される。

 米リーバ・システムズのように、大量に設置したリーダーをLAN経由で制御して、ICタグの場所を認識しながら読み取れるシステムもある。これと比べると、受信機が安価なことが特徴だという。価格は明らかにしないものの、受信機は単純に電波を発射するだけなので、ICタグ・リーダーよりは安価なもようだ。

 位置検知システムとしてこれまで多く導入されているものに、無線LANを使ったタグ・システムもある。欠点は無線LANタグが数千円と高価なことと、3~5m程度の精度しかないことである。ただし、位置検知のための基地局の数は少なくて済むとみられる。