[画像のクリックで拡大表示]

 「すべてのサプライヤに求める。全商品のパレットに無線ICタグを付けて利益を共有してほしい」――。2008年4月16日に始まった無線ICタグ専門イベント「RFID Journal LIVE! 2008」において、米ウォルマート・ストアーズのグレゴリー・Lジョンストン サムズ・クラブ担当上級副社長はこう宣言した(写真)。張り付けを求めるのは、会員制店舗「サムズ・クラブ」に収める商品に対してである。ウォルマートは2008年1月、約1万社の全サプライヤにICタグ張り付けを要請するレターを送付した。その概要を今回、公の場で初めて明らかにした。

 ウォルマートがICタグの張り付けを最初に求めたのは、05年1月にさかのぼる。ウォルマートの主要店舗である「スーパーセンター」など向けに求めたもので、現在は600社のサプライヤが要請に応じている。今回のサムズ・クラブ向けの要請がこれまでと違うのは、対応しないサプライヤに“罰金”を課すことだ。これまでの店舗では各サプライヤに対して、限られた種類の商品にICタグ張り付けを求め、その商品だけをICタグで管理していた。それに対しサムズ・クラブでは、パレットにICタグが付いていないとき、ウォルマート自身がICタグをすべて取り付ける。今回のスピーチでは明言しなかったものの、その“手数料”としてパレット当たり2ドルを請求する。この料金は来年1月には3ドルに上がる。

 サムズ・クラブは全米に約600店舗あり、08年1月期の売上高が444億ドルでウォルマートの総売上高の11.8%を占める。これから約1年かけて、その全店にICタグ・システムを導入していき、それに合わせて張り付けを求めていく。「そのスケジュールはサプライヤにとってもリーズナブルなものだ」とジョンストン上級副社長は主張する。08年1月30日からは、テキサス州の1つの物流センターに収めるパレットへの張り付けを求めている。対象の店舗は40店弱である。これを10月には物流センター5カ所に拡大し、09年1月には22カ所の全物流センターに拡大する。さらに09年にはケース単位、10年には個品にも張り付けを求めていく。ここでいう個品は、実際にはケース単位に近い。サムズ・クラブでは中小企業向けにパレット単位やケース単位で販売するタイプの店舗だからだ。チューイング・ガム1個ずつに付けろといっているのではない。

■変更履歴
本記事の初出時に、サムズ・クラブの売上高の全体に占める割合を「6.7%」としていましたが、正しくは「11.8%」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2008/5/19]

 ウォルマートとサプライヤの双方に見込めるメリットは、店頭での品切れや、キャンペーン商品の品出しミスを減らせることなどという。これは、これまでの店舗で実現しようとしていたことと基本的には変わらない。サムズ・クラブでの違いは、パレットを店頭にそのまま展示して販売するという特殊な店舗形態から生まれる。パレットを載せる棚に場所を表すICタグを張り付けておき、場所と店頭在庫をひも付けた形で管理する。これで店内の在庫状況が、置き場と関連付けられた形で正確に分かる。正しい商品を正しい場所に品出しする確認作業が容易になる。他の店舗では、ケースから商品を出して棚に出すと、ケースに張り付けられたICタグは「品出し済み」であることを確認するために読み取ったあと、捨てられるだけだった。

 将来的には「30秒でチェックアウトして、店を出たら自動的にレシートが携帯電話に届くようなことも可能になる」。ジョンストン上級副社長はそうした夢も語って、約17分間という簡潔なスピーチをしめくくった。