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 米IBMは米国時間2008年4月10日,記憶密度を現行メモリーの100倍以上に高められるという新型メモリー「レーストラック・メモリー」(レース場メモリー)を発表した。少ない消費電力で高速動作が可能で,可動部品を使わないため耐衝撃性に優れ,高い安定性/信頼性を持つうえ,製造コストが低いという。

 デジタル・データをナノサイズのワイヤー上の微細な磁気パターンで表現し,このパターンを動かすことでデータの読み書きを行う。磁気パターンの移動する様子がレース場を走る自動車と似ていることから,レーストラック・メモリーと名付けた。このワイヤーを高い密度で集積すると,メモリーLSIとして利用できる。

 まだ基礎研究の段階にあるが,レーストラック・メモリーを開発したIBMフェローのStuart Parkin氏は,今後10年以内に実用化可能と見込む。「フラッシュ・メモリーの高速性/信頼性と,ハード・ディスク装置の大容量を兼ね備えるメモリーが,予想より早く実現できそうだ」(IBM)。

 研究の詳細は,米国の科学雑誌「Science」(4月11日号)に掲載する論文「Current Controlled Magnetic Domain-Wall Nanowire Shift Register」(「電流を使った磁壁ナノワイヤー・シフト・レジスタの制御」),「Magnetic Domain-Wall Racetrack Memory」(「磁壁レーストラック・メモリー」)で説明する。

 米メディア(CNET News.com)によると,IBMは2~4年後に実際に動くレーストラック・メモリーを試作し,7~10年後に量産可能な状態にしたい考えという。

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