米国サクラメントで開催された「NHA Annual Hydrogen Conference」では,2008年4月2日の午前中にキーノート・セッション3「Vehicle and Infrastructure」が行われた。米GM社やトヨタ自動車,ホンダ,ドイツBMW社といった大手自動車メーカーをはじめ,カリフォルニア州での燃料電池普及を目指す非営利団体のCalifornia Fuel Cell PartnershipやオランダShell Hydrogen社,米Air Products and Chemical社から講演があった。

 トヨタ自動車からは同社 FC開発本部FC技術部長である河合大洋氏が登壇した。同氏は最近,注目を浴びている家庭用電源から充電して電気自動車として一定距離を走行可能なプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)に触れ,トヨタ自動車でも開発しているが,電池のエネルギー貯蔵能力はガソリンや水素に比べてまだまだ低いことを説明した。

 同社によれば,仮に米国で1充電当たり20~40マイル(32~64km)を電気自動車として走行できるPHEVにすべての車両を置き換えたとしても,米国での走行パターンではエネルギー消費量を20~30%削減できるにとどまるという。このことは,化石燃料からの脱却やCO2を半減させるためには,PHEVだけでは20~30%の削減が限界との見解を示したことになる。

 トヨタ自動車では,燃料電池車やPHEVをはじめ,さまざまなエネルギー源に対応できるように車両の開発を進めており,そのすべてにハイブリッド技術が必要になるとしている。燃料電池車については,改良した同社の燃料電池車「FCHV」は現在,1充填当り300マイル以上の走行距離と-30℃での始動が可能になっており,今後は耐久性と信頼性の向上に加えて,コスト削減を進める必要があるとした。

 さらに,課題として水素ステーションがなければ,燃料電池車は普及しない点を強調した。この点について,日本ではFCCJ(燃料電池実用化推進協議会)において自動車メーカーとエネルギー企業が一体となって2015年を目標に燃料電池車の普及に向けた活動を促進することで合意したことを説明し,米国でも同様な取り組みが始まることに期待を寄せていた。