日本芸能実演家団体協議会や日本音楽著作権協会(JASRAC)などの著作権関連89団体は2008年4月4日,私的録音・録画補償金制度の見直しに関する今後の議論について意見を表明した。文化庁文化審議会著作権分科会の私的録音録画小委員会は2008年4月3日に2008年度の第1回会合を開催し,補償金制度の見直しについての議論を再開した。前年度の議論を通じて,「現行の補償金制度の対象を縮小し,ほかの方法による解決に移行すべき」という方針を固めた。

 これに対して89団体は,「これまで我々は,音楽配信事業についても補償金制度で対応すべきと主張してきた」(実演家著作隣接権センターの椎名和夫運営委員)とこれまでの立場を説明したうえで,「消費者の利便性を損なうことなく,権利者の不利益が発生しない形が実現するのであれば,権利者側としても大きな前進」と小委員会の議論を尊重する姿勢を示した。さらに,「(現在の状況は我々にとって)妥協でも挫折でもない」と権利者側の現状を説明した。

 2008年6月2日に導入予定の無料デジタル放送のコンテンツ保護技術「ダビング10」については,「その時点までに,(放送番組の権利者に対価を還元する仕組みである)補償金制度の問題が解決することが必要だ。解決できないのであれば,導入すべきでない」とした。そのうえで,「(2008年)6月2日にダビング10が実施できるかのボールはメーカー側にある」という見解を示した。

 さらに89団体は,家電メーカーなどの業界団体である電子情報技術産業協会(JEITA)の関係者が私的録音録画小委員会の第1回会合で,「(補償金制度の見直しについては)バランスの取れた解を見付けるため,真摯(しんし)に努力する」と発言したことを,「大きな変化であり高く評価する」とした。これまでJEITAの公式見解は,「デジタル放送については権利者の不利益が発生しないので補償の必要はない」というものだった。