中国・上海で開催された米インテルの開発者会議「Intel Developer Forum」において、2008年4月3日の最後の基調講演にはアンドリュー・チェン コーポレート技術統括本部 副社長 兼 インテル・リサーチ所長が登壇した。将来を見据えたさまざまな技術を紹介しながら、今後のデジタル分野でどのような変革が起こるのかを展望した。
「世界のあらゆる場所で、デジタル分野における変革が起こっている」。冒頭でこのように述べたチェン氏は、その例として教育分野を取り上げた。かつては、教師が黒板に書いた内容を生徒がノートに写し取っていたが「今後の授業はよりインタラクティブになっていく」と予測した。将来は生徒一人ひとりが、パソコンを使いながら授業を受ける姿が当たり前になるかもしれない。
こういった社会を先取りして、学習用デバイス「クラスメートPC」を推進しているという。インテルは数年前から中国などの小中学校でクラスメートPCを試験的に導入してきた。第2世代となる新しいクラスメートPCは耐衝撃性を高め、落としても壊れにくくなった。
デジタル化で大きく変わった機器として、カメラを取り上げた。数年前まではフィルムを使っていたが、今はデジタルカメラが主流となっている。デジタル映像をより進歩させる技術として、米リフォーカス・イメジングのライトフィールド・カメラを紹介。光の場をソフトウエアで処理し、写真を撮影したあとで、フォーカスの合う位置や深さを自由に変更できる。
インテルは、多数のコアを効率的に制御する並列プログラミング言語Ctを開発したとも説明した。並列処理の例として、中国のソフトウエア開発会社ニューソフトがデモを見せた。安全確保のために、自動車が走行しながら、カメラで周囲の映像をキャプチャーし、車、バイク、歩行者の位置を自動的に検知する。この映像分析ために、複数コアのプロセッサーによる高い処理性能が必要なのだという。
中国の大学が作成したロボットのデモを見せたほか、環境問題への取り組みとして温暖化ガスを検出するシリコンセンサーをインテルが開発していることも紹介した。チェン氏は、講演の最後に「工欲善其事 必先利其器(良い仕事をするには、良い道具をそろえないといけない)」という孔子の言葉を読み上げ、課題を乗り越え、今後もあらゆる側面でさまざまな革新を目指していく決意を示した。