3.2GHz動作にしたときの「AMD OverDrive」の画面。「Core Speed」(画面中の赤枠)が3199.50MHzになっている。
3.2GHz動作にしたときの「AMD OverDrive」の画面。「Core Speed」(画面中の赤枠)が3199.50MHzになっている。
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3.2GHzに設定したときのアイドル時の動作周波数。定格の半分の1250.50MHzを示している。動作電圧は1.05Vだ。
3.2GHzに設定したときのアイドル時の動作周波数。定格の半分の1250.50MHzを示している。動作電圧は1.05Vだ。
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省電力機能を有効にして放置したときに、AMD OverDriveで表示されたCPU温度。33℃だった。
省電力機能を有効にして放置したときに、AMD OverDriveで表示されたCPU温度。33℃だった。
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円周率計算ソフトの「スーパーπ」を4個同時に実行させ続けたときのCPU温度は65℃だった。
円周率計算ソフトの「スーパーπ」を4個同時に実行させ続けたときのCPU温度は65℃だった。
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【グラフ1】3Dレンダリングのベンチマーク「CINEBENCH R10」の結果。黄色いグラフがオーバークロックした状態だ。
【グラフ1】3Dレンダリングのベンチマーク「CINEBENCH R10」の結果。黄色いグラフがオーバークロックした状態だ。
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【グラフ2】Futuremarkのアプリケーションベンチマーク「PCMark05」の結果。Core 2 Quad 9450に迫る性能を示した。
【グラフ2】Futuremarkのアプリケーションベンチマーク「PCMark05」の結果。Core 2 Quad 9450に迫る性能を示した。
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【グラフ3】ペガシスの「TMPGEnc 4.0 XPress」を使ったハイビジョン動画のエンコード処理の性能差。オーバークロック状態だとCore 2 Quad Q9450を軽く上回る。
【グラフ3】ペガシスの「TMPGEnc 4.0 XPress」を使ったハイビジョン動画のエンコード処理の性能差。オーバークロック状態だとCore 2 Quad Q9450を軽く上回る。
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【グラフ4】「PCMark05」で4スレッドを同時に実行する「Multithreaded Test 2」を動かしたときのシステム全体の消費電力。自動設定の電圧では、オーバークロックしたPhenomはなんと340Wを超えた
【グラフ4】「PCMark05」で4スレッドを同時に実行する「Multithreaded Test 2」を動かしたときのシステム全体の消費電力。自動設定の電圧では、オーバークロックしたPhenomはなんと340Wを超えた
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 AMDが2008年3月27日に発表したデスクトップPC向けのクアッドコアCPU、Phenom X4 9850 Black Editionは、通常は固定になっている動作周波数の倍率が可変になっており、オーバークロック(メーカーが定めた仕様を超えた周波数で動かすこと)が容易に試せるようになっている。簡単な操作でどこまで動くのか試してみた。

 なお、オーバークロックはあくまでも「お遊び」だ。規定外の周波数に設定して動かすと壊れてしまうこともあるし、場合によってはCPU以外のパーツも故障してしまう。オーバークロックの上限値は個体や設定、パーツの組み合わせにより大きく変わる。すべての製品で今回紹介したような結果が得られるとは限らない。日経WinPC編集部は、オーバークロックを試したことによるパーツの破損には一切関知しない。チャレンジするならあくまでも自己責任で行ってほしい。

 テストに使用したパーツは以下の通りだ。

【マザーボード】A780GM-A(ECS、AMD 780G搭載)
【メモリー】DDR2-800 1GB×2(JEDEC準拠)
【HDD】Deskstar P7K500 500GB(日立グローバルストレージテクノロジーズ)
【グラフィックスボード】Radeon HD 3470搭載ボード(玄人志向)
【OS】Windows Vista Ultimate Service Pack 1 32ビット日本語版

 CPUクーラーは、大型の「忍者プラス・リビジョンB」(サイズ)を利用した。マザーボードにCPUとクーラーを取り付け、BIOS設定で倍率を変更した。倍率に合わせて動作電圧が変わる場合は、BIOSの設定に任せている。ユーザーレベルで設定したのは、あくまでも倍率だけだ。

3.5GHzでも起動、3.2GHzでソフトがぎりぎり動作

 まず3.6GHzでは起動せず。3.5GHz、3.4GHzではPCは起動するものOSは起動しなかった。3.3GHzではOSが起動して青いエラー画面が出た。3.2GHz動作でOSが起動して、一応安定したように見えた。このときのAMDのユーティリティーソフト「AMD OverDrive」では、16倍の3199.50MHzと表示されていた。動作電圧は定格を上回る1.525V(BIOSでの表示は1.55V)。省電力機能「Cool'n'Quiet」を有効にすると、1250.50MHz(6.25倍)にまで低下する。これは定格動作周波数(2.5GHz)の半分だ。

 Cool'n'Quietを有効にして放置し、AMD OverDriveで温度を確認したところすべてのコアが33℃だった。そこで、円周率計算ソフトの「スーパーπ」を4個同時に実行し、経過を見たところ、60℃辺りまでは急速に温度が上昇し、65℃を超えた辺りから伸びが鈍るという状況だった。

 3.2GHzに設定した状態で、編集部で通常実行しているベンチマークを試したところ、すべて問題なく動作した。その結果がグラフ1~3だ。3Dレンダリングのベンチマークソフト「CINEBENCH R10」で、1コアだけで処理する「Rendering(Single CPU)」の結果を見ると3.2GHz動作のPhenom X4 9850 Black Editionは2.4GHz動作のCore 2 Quad Q6600をやや上回る性能にとどまっている。ところが4コアを全部使った「Rendering(Multiple CPU)」ではスコアが伸び、Core 2 Quad Q9450に届く勢いだ。これは、デュアルコアを2個実装してクアッドにしているIntel製CPUに対して、コアがダイの中で密に結合しているPhenomの特性が現れていると言えるだろう。

 続く「PCMark05」のCPU関連テストでは、Core 2 Quad Q9450に匹敵するスコアとなった。ペガシスの「TMPGEnc 4.0 XPress」を使って1440×1080ドット、1分間のMPEG-2 TS動画をWMVに変換するテストでは、Core 2 Quad Q9450を軽く上回る処理性能の高さをみせている。

 今回はできるだけ高い動作周波数で動かしたときの性能を調べるのを主な目的としていたためベンチマークテストが終了できればよしとしたが、3.2GHz動作ではやや安定性に欠ける面があった。まず、省電力機能を無効にすべく、コントロールパネルの電源関連の設定で「高パフォーマンス」を選択すると、しばらくしてシステムが停止して画面が乱れてしまうことがあった。

 また、先に述べたスーパーπを使った温度測定では、動かし続けていると、4個実行したスーパーπのうち2個がエラーを表示して停止してしまった。その後、計算を再開しても少し動かしてエラーが出る状態が続いていた。再起動すれば問題なく、頻繁にあちこちでエラーを起こすわけではないものの、安心して使い続けるには冷却を強力にするか、設定をもう少し詰める必要があると感じられるレベルだった。