写真1●Atomの概要
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写真2●Atomを発表する米インテルのアナンド・チャンドラシーカ上席副社長
写真2●Atomを発表する米インテルのアナンド・チャンドラシーカ上席副社長
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写真3●Atomを搭載する松下電器産業の「TOUGHBOOK」
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写真4●レノボのAtom搭載MID機
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写真5●クラリオンのAtom搭載MID機
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写真6●MID試作機を手にする各国PCメーカーの代表
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 米インテルは2008年4月2日、中国・上海で開催中の開発者会議「Intel Developer Forum(IDF)」で新型プロセサ「Atom」を正式発表した。MID(モバイル・インターネット・デバイス)など小型情報機器への搭載を想定したもの。ダイの大きさは25平方mmで、既存のノートPC向けプロセサの4分の1以下。熱設計電力(TDP)は現在のノートPCの10分の1以下である0.65~2.4W。アイドル時の動作電圧は80ミリ~100ミリWに抑えたという。

 動作を想定しているOSはWindowsとLinux。プロセサの命令セットはCore 2シリーズと互換性があり、これまでのPC向けアプリケーションが再コンパイルの必要なく動作する。動作周波数は最大1.86GHzである。「Webサイトの閲覧はもちろんのこと、高精細ビデオ再生や3次元画像の処理にも耐えうる相応の処理性能も確保した(写真1)。(ARMなどの)競合他社のモバイル・プロセサに比べて、4倍から6.5倍の性能が期待できる」(インテルのアナンド・チャンドラシーカ上席副社長兼ウルトラ・モビリティー事業部長=写真2)としている。

 Atomの搭載を想定しているMIDという機器のジャンルは、「外でもPCと同じようにWebサイトを見たい」というニーズに応えるもの。「検索、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、ビデオ配信など、ネットがかつてないほどに社会生活に浸透している。ポケットに入れて持ち歩けるMIDは新たな市場を切り開く」とチャンドラシーカ氏は強調する。

 これまでも携帯電話でWebサイトを閲覧できた。だがインテルは「携帯電話でのWebブラウジングは、ユーザーに満足できるものではない」(チャンドラシーカ氏)とする。インテルによれば、IAアーキテクチャではない機器上のWebブラウザでは表示や動作にエラーが多く発生する。インテルは日本での調査データを引きつつ「8割のユーザーは携帯電話のWebブラウジングに不満足」(同)と述べた。

 Atom向けのプラットフォーム(各種のチップセットを含む基盤部品)には「Centrino Atom」という名称が付く。これまで「Menlow」という開発コード名で呼ばれていた。AtomおよびCentrino AtomはOEMメーカーに対してはすでに出荷開始している。「5月から6月にかけて、各メーカーから新機種が市場に投入されるだろう」(チャンドラシーカ氏)。

 IDFの講演や発表会では、松下電器産業やクラリオン、レノボがMID試作機を披露した。松下電器産業は屋外での利用を想定し堅牢性を高めた機種「TOUGHBOOK」シリーズの1モデルとして投入する予定(写真3)。チャンドラシーカ氏は講演壇上で手元からわざと床に落としつつ、その特徴をアピールした。

 レノボのMIDはGPS(全地球測位システム)などを搭載し、日常生活のツールとしての色を強めている(写真4)。クラリオンのMIDは「従来の車載端末と今後登場するMIDの中間的な位置づけ」(説明員)にし、他社MID製品との差異化をはかる(写真5)。

 Atomはインテルがこれまで開発コード名「Silverthrone」として紹介してきたもの。Atomシリーズを搭載する次期プラットフォーム「Moorestown(開発コード名)」は、スマートフォンも想定した設計にする。Moorestownの投入は09年から10年の予定。詳細は08年秋に台湾で開催するIDFで発表するという。