写真1●インテル コミュニケーション・テクノロジ・ラボ ディレクタ ケビン・カーン氏
写真1●インテル コミュニケーション・テクノロジ・ラボ ディレクタ ケビン・カーン氏
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●インテルが開発中の技術の例。ユーザーがいる場所を自動認識し、その場所にちなんだ解説文をネット上から探し表示する
写真2●インテルが開発中の技術の例。ユーザーがいる場所を自動認識し、その場所にちなんだ解説文をネット上から探し表示する
[画像のクリックで拡大表示]

 サーバー市場、パソコン市場それぞれで高いシェアを持つ米インテル。現在「次なるフロンティア」として有望視しているのがモバイル市場だ。研究開発部門もモバイル・コンピューティング分野に注力している。インテルのコミュニケーション・テクノロジ・ラボのディレクタを務めるケビン・カーン氏(写真1)は「Carry Small, Live Large」という考え方を提示し、次世代のモバイル・コンピューティングの姿と、それを現実化する研究開発の動向を紹介した。

 インテルは超小型ノートPCや、MID(Mobile Internet Device)といったモバイル機器向けのIAプロセサ「Silverthrone」を開発中だ。インテルは小型モバイル機器を中心に、家電やパソコン、サーバー、自動車などが協調動作する姿を構想している。要するに持ち歩く機器自体は小さいが、活用範囲は今までよりも広くなる、ということである。これをCarry Small, Living Largeというキャッチフレーズとして表現しているわけだ。

 小型モバイル機器では、「ユーザーのニーズに応じて、特定の処理を別のマシンに任せることになる」(カーン氏)という。長い文章を打つときは外付けのキーボードに接続し、写真をきちんと見たいときは大型のディスプレイに接続する。例えば小型モバイル機器で3次元ゲームを動かすとする。別に用意する大型ディスプレイにも画像を表示させる場合、その画像のレンダリング処理は、高性能なGPU(画像処理ユニット)を持つ別のパソコンに任せる。インテルはこの処理形態を「Remote Graphics Rendering」と呼ぶ。

 多様な機器と接続する手段は無線が中心となる。無線LANやWiMAX、3G、Wireless USBなどが考えられる。「モバイル機器の小型化を進めるためには、別々のチップとして用意してきた無線通信機能をワンチップ化し、その上で省電力化を進めることが欠かせない」(カーン氏)。機器の相互接続性を維持する標準化活動も必要だ。

 新しいモバイル機器ならではの新しいアプリケーションとして、カーン氏は「Context Awareness(文脈を認識する)」というキーワードを挙げる。モバイル機器に搭載するカメラやGPS(全地球測位システム)、コンパスを活用した旅行アドバイザ・アプリケーションなどが考えられるとした。いまユーザーがいる場所を自動認識し、その場所にちなんだ解説文をネット上のデータベースから探してきてユーザーに表示する、といったものである(写真2)。インテルではこの種のアプリケーションを実現する基礎技術の研究開発も進めている(関連記事)。

 Context Awarenessを体現するアプリケーションの前提となるのは、処理速度のさらなる向上と消費電力の低減だ。インテルのアンドリュー・チェン副社長 Intel Researchディレクタによれば、動画像のリアルタイム解析に4テラフロップスの処理性能と10kWの電力が必要だという。「モバイル機器で実現するためには、まだまだ技術の向上が必要だ」(チェン氏)。