日本音楽著作権協会(JASRAC)とニワンゴは2008年4月1日、ニワンゴの運営する動画投稿サイト「ニコニコ動画」におけるJASRAC管理楽曲の二次利用を包括許諾する契約を締結したと発表した。これにより、JASRACが管理する音楽著作物を使用した動画を、ニコニコ動画へ自由に投稿可能になる。

 一般に動画投稿サイトでユーザーがJASRAC管理楽曲を二次利用する場合、JASRACに対し音楽著作権の許諾申請を行う必要がある。従来は動画投稿サイトとJASRACとの間で包括許諾するという枠組みがなく、個々のユーザーがJASRACに申請する必要があった。このため、JASRACの許諾を得ずに二次利用されるケースが多かった。

 その後JASRACは2007年6月に「動画投稿(共有)サービスにおける利用許諾条件について」と題する文書を配布、音楽著作権の包括的な利用許諾を受け付ける態勢を整えた。これに基づき、同年7月にJASRACとヤフーとの間で初の包括許諾が締結された。JASRACとニワンゴとの間でも、同年10月に契約締結に向けた協議を始めていた。

 今回の契約締結により、ユーザーがニコニコ動画において合法的にJASRAC管理曲を使用可能になる。例えば、自分や友人が演奏・歌唱している様子などを収録した動画をニコニコ動画に投稿することが可能になる。ただし、他の動画投稿サイトと同様、市販の音楽CDの音源をそのまま二次利用することはできない。

 ニワンゴはJASRACに対し、契約に基づいて音楽著作権の使用料を支払う。今回の契約では、「ニコニコ動画が得る収入の1.875%」と定められた。ここでいう収入は、ニコニコ動画の有料会員が支払う料金、ニコニコ動画に掲載される広告から得られる広告料などが含まれる。この条件は、先にJASRACとの契約を締結しているヤフーやソニーと同じという。「ストリーム配信に適用される料率が1.5%。これに、個々の投稿者が音楽を複製することを加味し25%増とした」(JASRAC広報部)。

 詳細な方法は未定だが、ニワンゴはJASRACに対し、二次利用された楽曲とその閲覧数などの統計情報も報告する。JASRACはこの統計情報を基に、音楽著作権の使用料を各アーティストなどに配分する。

 JASRACと動画投稿サイトとの包括許諾は、既にヤフーの「Yahoo!ビデオキャスト」、ソニーの「eyeVio」、sus4の「ClipCast」との間で締結されており、今回のニコニコ動画が4例目。JASRACは、動画投稿サイト世界最大手の「YouTube」を運営する米グーグルとも協議を進めている。「許諾を前提に前向きに協議している」(JASRAC広報部)という。

■変更履歴
記事掲載当初、第5段落において「個々のユーザーが音楽を複製することを加味し」とありましたが、誤解を招く表現であったため「個々の投稿者が音楽を複製することを加味し」と修正しました。[2008/04/01 22:10]