情報処理推進機構(IPA)は2008年3月31日、ユーザー企業向けスキル標準「UISS(Users’Information Skill Standards)」の新版Ver1.2を公表した。標準の中心を成すタスクフレームワークをはじめ、内容を大幅に見直した。08年10月に情報処理技術者試験の新制度との対応を明確化することも明らかにした。報告書はIPAのWebサイトからダウンロードできる。

 UISSは、情報システムを利用する企業の組織と人材に必要なスキルと知識を体系化したもの。ITスキル標準(ITSS)のユーザー企業版に当たる。06年6月に初版、07年6月に1回目の改訂版をそれぞれ公開。今回が2回目の改訂となる。

 Ver1.2(正式名称は「情報システムユーザースキル標準~IS機能の可視化による組織力向上のために~Ver1.2」)の改訂のポイントは3点。

 まず、IS(情報システム)機能を再検証し、不足する機能を追加した。UISSは、ユーザー企業における情報システムの設計、構築、活用、評価に関連する業務をIS機能として体系化し、「タスクフレームワーク」としてまとめている。Ver1.2では、IS機能やユーザーから寄せられた意見を反映する形で、IS機能全般を検証。IS機能の追加・統合や、機能間の関係見直しを実施した。

 特に重視したのは、ITガバナンスの視点での検証。内部統制の整備が求められていることが背景にある。検証には、ITガバナンスのフレームワーク「COBIT 4.0」を参照した。例えば「IS保守・運用」としていたのを「IS保守」と「IS運用」に分離する、といった修正を施した。

 ポイントの2点めとして、ITSSとの関連を具体化した。UISSでは、IS機能の実現に必要なスキルや知識を「機能・役割定義」にまとめている。Ver1.2では、機能・役割定義の項目をITSSの職種やスキル項目と関連づけて「ITスキル標準スキル項目対応表」に整理した。この表を見ると、UISSの「IS導入/アプリケーションコンポーネントの分析・設計」に含まれる「システム開発の準備」や「システム化要件定義」は、ITSSのAPS(アプリケーションスペシャリスト)の「業務分析」スキル項目を参照している、などと把握できる。

 もう1つのポイントは、情報処理技術者試験の新制度との対応に関する方針を明確化したこと。UISSはITSSと同様、IT人材のキャリアレベルを13職種ごとにレベル1からレベル7の7段階で示している。Ver1.2では、レベル4以下のキャリアレベルに新試験を利用できるとし、レベル1をITパスポート試験、レベル2を基本情報技術者試験、レベル3を応用情報技術者試験の合格をもって評価できるようUISSを改訂していくことを打ち出した。レベル4と新試験制度との関係は、10月に公開するUISSの次バージョンで明確化する。

 UISS Ver1.2と同時に発表したITSS V3でも新試験制度との関連を明確化した(関連記事)。組込みスキル標準(ETSS)についても、「10月に新試験との関係を打ち出す」(IPA ITスキル標準センターの丹羽雅春センター長)方針。丹羽センター長は記者向け説明会で、「スキル標準はあくまで人材の育成や活用のためのツール。くれぐれも試験合格を目標にしないでほしい」と再三強調した。