総務省は2008年3月31日,デジタル・デバイドの解消に向けた具体的な施策をまとめた「デジタル・ディバイド解消戦略会議第一次報告書」を公表した。

 政府のIT戦略本部は「2010年度までにブロードバンド・ゼロ地域の解消」や,「2008年度末までに条件不利地域で新たに20万人以上が携帯電話を利用できるようにする」といった目標を打ち出している。総務省はこの目標を確実に実現すべく,2007年10月に「デジタル・ディバイド解消戦略会議」を設置。学識経験者や地方自治体,通信事業者などと共同で具体的な施策を議論してきた。

 今回公表した「第一次報告書」では,(1)ブロードバンド基盤の整備,(2)超高速ブロードバンド基盤の整備,(3)携帯電話不感地帯の解消,(4)基盤整備と利活用の一体的推進,(5)地域情報化アドバイザーの活用,(6)フォローアップ体制--の六つの観点からデジタル・デバイドを解消するための施策をまとめた。

 (1)は光ファイバとモバイルWiMAX,高速無線LANなどを組み合わせた「合わせ技」でブロードバンドの基盤を整備していく。離島や山間部など条件が著しく不利な地域については,衛星ブロードバンドの活用も検討する方針である。(2)は,通信事業者や地方公共団体による光ファイバ網の整備,ケーブルテレビ網の高速化などを推進していく。

 (3)は「フェムトセル」や「ふるさとケータイ事業」の促進などを挙げる。フェムトセルは家庭やオフィスに設置する超小型の携帯電話基地局で,携帯電話による通話や通信をブロードバンド経由で携帯電話網にわたす。フェムトセルの促進が「不感地帯の解消に向けて重要」とした。また,ふるさとケータイ事業は,地域を対象としたMVNO(仮想移動体通信事業者)のこと。ふるさとケータイ事業にどの程度の費用がかかるか分かりにくいので,携帯電話事業者各社に「標準的な卸料金プラン」の提示を求めることを検討する。

 (4)は,基盤整備だけでなく,利活用との合わせ技で推進していく。マニュアルや事例集の整備,セミナーやシンポジウムの開催などを通じてノウハウを共用する。(5)は,地域の要請に応じて民間の有識者「地域情報化アドバイザー」を派遣する。(6)は,「デジタル・ディバイド解消戦略推進本部」(仮称)を設置し,各施策の進ちょく状況をフォローアップする。必要に応じて施策の追加や予算要求への反映なども想定する。

 これらの施策を踏まえ,デジタル・デバイドの解消にかかる費用は最大で1兆2000億円前後。2007年9月末時点でブロードバンド・ゼロ地域に居住する約220万世帯を対象にブロードバンドを整備する費用が2906億~5674億円,2006年度末時点で携帯電話のエリア外となっている約62万人を対象にエリアを整備する費用が3300億~6600億円という。ただし,あくまでも試算で,すべてが公的支援となるわけではない。報告書ではあくまでも民間主導が原則で,地方公共団体に対する支援策の拡充を検討するとしている。なお,デジタル・デバイドの解消による経済波及効果は1兆7600億円とする。

 総務省は6月をメドに最終報告書をまとめ,2009年度の予算要求などにも反映させる予定である。

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