写真●NGN商用サービス開始について語るNTT持ち株会社の三浦惺社長
写真●NGN商用サービス開始について語るNTT持ち株会社の三浦惺社長
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 「地域的にスモール・スタートとなり,新しいサービスが多いわけではない。しかし本日無事にNGNの商用サービスをスタートできた」。NTT持ち株会社の三浦惺社長は2008年3月31日の定例記者会見で,同日スタートしたNGN(次世代ネットワーク)商用サービスについてこう語った。

 この日はNTTグループにとって,新しいネットワーク・サービスを始める記念日である。だが,会見に出席したのは持ち株会社の三浦社長だけで,実際にNGNのネットワーク・サービスを提供するNTT東西の幹部の姿はなかった。2006年12月のNGNのトライアル開始時に,関係各社が多数出席した時と比べると(関連記事),寂しさを感じざるを得ない会見だった。

 それでも三浦社長は,「08年夏から秋にかけてエリアを大きく拡大し,サービスも新たに増やす。そのころを一つの節目として本格的なPRを開始する」と語り,NGNの本格展開が夏以降になる点を強調した。

IP再送信は間に合わず,NGNを使ったSaaSなどに期待


 NGNの商用サービスとしては,NTT東西が3月28日に「フレッツ 光ネクスト」などのサービスを発表済み(関連記事)。だが既存のフレッツ系サービスとほぼ同じ内容で,NGNならではの特徴は見えにくい。

 NGNの最大の売りになるとみられていた地上デジタル放送のIP再送信(関連記事)も,一部のテレビ局の再送信同意が得られず,サービス開始の3月31日に間に合わなかった。三浦社長は「テレビ局との間で議論が詰まっていないところがあるが,できるだけ早く同意を得られるよう努力する。そう遠くない時期に同意が得られるのではないか」と説明した。

 NTTグループにとってNGNの特徴を生かしたサービス開発が急務となるが,三浦社長はQoS(quality of service)を保証するサービスが,NGNならではのサービスになると説明する。QoS活用サービスの例として,SaaS(software as a service)などを挙げた。三浦社長は「現在のネットワークでは,安全性や安定性の面でSaaSの利用を躊躇(ちゅうちょ)している企業が多い。しかしNGNをネットワークに使うことで課題を克服できる。NGNの普及によってSaaSの需要も膨らんでいくだろう」と語り,今後NTTグループとしてSaaS事業者向けにプラットフォームを構築していく方針を示した。

 既存の電話網やフレッツ網をどのようにNGNに移行させるのかも注目される。複数のネットワークが併存したままでは管理・運営コストが増すばかりだからだ。三浦社長は「ネットワークを複数運営するのは望ましくない。できるだけ早く移行していくのが基本スタンス」と説明。移行コストをできるだけ円滑にするような技術開発を進め,別途移行計画を明確にしていくとした。