写真●大和証券グループ本社の中村明常務執行役CIO(最高情報責任者)
写真●大和証券グループ本社の中村明常務執行役CIO(最高情報責任者)
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 「2008年度のIT関連支出は最大で約1000億円。これは03年度の倍に当たる。しかし、システムの維持運用費は、変わらない見込みだ」。大和証券グループ本社の中村明常務執行役CIO(最高情報責任者)は2008年3月24日、同グループのIT戦略に関する説明会でこう述べた。

 「近年は、IT戦略がビジネス戦略そのものになっている」(中村CIO)という同社は、年々IT投資を増やしている。特に07年度は本店ビルやデータセンターの移転といった大型案件が重なり、IT関連支出の合計が約1000億円に上った。08年度はそうした大型案件はないものの、09年の稼働を予定する東京証券取引所の次世代売買システムへの対応などがあり、07年度と同等の支出を予定する。

 大和証券グループのIT関連支出の特徴は、維持運用費の割合を下げていることだ。全体の支出は、03年度の500億円に比べ、07年度/08年度とも倍増している。しかし維持運用費は、03年度の215億円に対して07年度は約280億円と大差ない。「08年度も前年度同等にする」(中村CIO)計画だ。支出全体に占める維持運用費の割合は、03年度の43%から、07年度は28%にまで下がっている。

 つまりIT関連支出の増加分は、ほぼそのまま新規投資ということだ。当然、新規投資で構築したシステムの維持運用費は次年度に加わるはずである。にもかかわらずIT投資額ほど維持運用費が増えていない理由について中村CIOは、「1つのデータセンターにグループ全体のシステムを集め、共同利用を進めているから」と説明する。事業会社ごとのシステムの共同利用を進めることで、維持運用費の削減を実現しているというわけだ。

 最近の案件でも、「共通化を考えずにとにかく構築スピードを優先してシステムを作らなくてはならないものがあった」(同)。08年度は、そうしたシステムの共通化に取り組むことで、維持運用の効率をさらに高める考えだ。