Microsoftのファイル・フォーマットOffice Open XMLをISO(国際標準化機構)の標準として承認するかどうか,再投票期限が2008年3月29日に迫っている。既にISO標準となったODF(Open Document Format)の推進団体がOpen XMLに対する懸念を表明するなど,投票を目前にアピール合戦が激しさを増している。

 Open XMLはMicrosoft OfficeのXML形式ドキュメント・フォーマット。Microsoft Office 2007より採用されている,拡張子がdocx,xlsx,pptxのファイル形式である。OpenXMLは2006年12月にEcma Internationalの標準規格として承認され,ISOおよび国際電気標準会議(IEC)の合同技術委員会JTC 1での標準化審議が行われていた。

 2007年9月に第1回の投票が行われ,そこでは採用が見送られた(関連記事)。承認を受けるには参加国104カ国の3分の2以上が賛成し,反対は全体の4分の1下でなくてはならないが,賛成票が53%,反対票が全体の26%だったためだ。

 この投票を受け,Microsoftは標準化案に寄せられたコメントに対する対案を作成,2008年2月末にスイスで行われた会議「Ballot Resolution Meeting」に提出した。この結果を基に,参加各国は2008年3月29日までに第2回の投票を行う。正確には,3月29日までに前回の投票内容を変更することができる。変更しない場合は前回の投票がそのまま継続となる。

 日本では,情報処理学会 情報規格調査会 SC34専門委員会でOpen XMLのISO化に関する審議が行われている。

 Microsoftは「Open XMLは顧客に支持されている」として,ISO化にも自信を見せる(関連記事)。

 これに対し,ODF支持派はMicrosoftに対するOpen XMLに対する批判を展開している。ODFはオープンソースのオフィス・ソフトOpenOffice.orgのXMLフォーマットをベースに,OpenDocument Format Alliance(ODF Alliance)が策定した仕様である。既にオフィス・ドキュメントのXMLフォーマットとして2006年にISO標準となっている。

 ODF Alliance Executive DirectorのMarino Marcich氏は,ITproに声明を寄せ,Open XMLの改善案は十分に審議されているとは言えないと主張した。「2月末,6000ページにも及ぶ,複雑で,エラーが数多く見られるマイクロソフトの標準の提案書について評価を行うべく,30カ国以上の国々の標準化委員会の代表が,スイス・ジュネーブに一堂に会した。しかしながら,会議では1100もの推奨変更の内,約20%しか議論することができなかった」(ODF alliance Marcih氏)。会議の期間はわずか5日間。また,会議は変更についての議論の場であり,採択するかどうかは,会議の後,各国の委員会で審議される。その審議の期間も,30日ではあまりに短すぎる,今回は否決されるべきであるとODF allianceは主張する。

 内容に比して審議期間が少なくなってしまったのは,ISOの審議制度がこのように膨大な仕様を対象にすることを想定していなかったためだ。ODFの仕様は数百ページで,Open XMLより一けた少ない。Open XMLは機能が膨大すぎ,サードパーティが実装できる可能性が少ない」とODF Alliance関係者は主張する。ODFは仕様が小さく,あいまいな部分もあるということになるが「ODFはOpenOffice.orgという,ソースコードが公開された参照実装を見ることができる」とODF Allianceは主張している。

 そのほかにもODF Allinaceは「Oepn XMLは多くの技術的なエラーと矛盾点を含んでいる」として,数々の批判をサイトに掲載している。

 またオープンソース・ソースソフトウエア開発者を法的な問題から守ることを目的として設立されたFreedom law centerは,Open XMLには特許リスクが存在していると主張する。MicrosoftはMicrosoft Open Specification Promiseと呼ぶ制度で,相互運用性確保のために仕様に関連する特許を一定の範囲で許諾しているが,GPLとは相容れず,また,仕様の現在のバージョンについては特許を許諾しても,今後のバージョンに関する保証がないと主張している。これに対してMicrosoftは,担当者のブログなどで,Open XMLには特許リスクは存在しないとの主張を繰り返している。

 各国はOpen XMLを国際標準に足る品質と安全性に達したと判断するのか。その結果はまもなく明らかになる。