写真●記者会見に臨むイー・アクセスの千本倖生取締役会長
写真●記者会見に臨むイー・アクセスの千本倖生取締役会長
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 イー・アクセスは2008年3月19日,アッカ・ネットワークスに送付した質問状の趣旨と状況に関する説明会を開催した。この説明会の席上で同社は,アッカが3月7日に自己株式を取得した際の手法を批判。訴訟を検討すること,取引を戻すよう要求したこと,新経営陣に質問状を送付したことを明らかにした。なお同社は,アッカの発行済株式総数の13.10%(2008年1月11日時点)を保有する筆頭株主である。

 事の発端は,アッカ・ネットワークスが3月7日に自己株式の買い付けを実施し,発行済株式総数の10.3%に当たる1万2820株を取得したこと。これは主要株主の三井物産が保有する全株式を売却したことによる(関連記事)。イー・アクセスは自己株式取得の方法に問題点があるとして,アッカに質問状を提出していた(関連記事)。

 この買い付けに対してイー・アクセスが問題視したポイントの一つは,取引の周知,検討のための時間が短すぎること。取引の発表が3月6日午後4時20分,実施は7日の午前8時45分だった。取引が通常の取引時間外で,かつ立会外で行われ,大量の売買であったことも挙げた。会見に臨んだ千本倖生取締役会長(写真)は「この日の午前8時45分に1万2000株の取引が一瞬に行われた。実質的には,予定された相対取引だった」と指摘した。同社は7日朝にアッカ株を買おうとしたが,証券会社を通じてジャスダックから断られたという。

 アッカの当期純利益の140%にあたる19億2000万円の資金を使って取引が行われた点も問題視した。「この資金を使って,社外監査役と社外取締役を派遣した三井物産1社を対象に実施された。特定株主にあまりに偏った,個人株主を含む一般投資家を軽んじた施策であると考えざるを得ない」(千本会長)。

 回答期限の3月18日にアッカから受け取った先の質問状に対する回答の骨子は,「自己株式取得はジャスダック取引所の規則に従った市場取引であり会社法に違反していない」「売付申込数量が買付数量を超えたら按分するしくみで,相手方は特定されていない」というものだったという。「規則やしくみといった形式論に終始しており,当社が問題視した実質的な違法性や株主平等の大原則になんら答えていない」(千本会長)。そのため同社は,アッカの取引は会社法の株主平等の原則に反する可能性があり,個人株主を含む株主をフェアに扱う意識が薄いと判断した。

「取引は元に戻せ」と新経営陣に要求

 イー・アクセスは,(1)アッカの現経営陣などに対する株主代表訴訟の検討を始める,(2)新経営陣に取引を元に戻すように要求する,(3)今後の株主の扱い方に対して新経営陣の考え方をただす---という対応策を取る。

 これから検討する訴訟の対象は,アッカの現経営陣である木村正治代表取締役社長,湯崎英彦取締役,廣野公一取締役と,三井物産が派遣した社外取締役の佐藤元信氏および社外監査役の垣外彰氏(佐藤氏と垣外氏は17日付で辞任)。その理由として,「他の売買機会を奪い,公正な価格形成機会を放棄し,著しく会社の価値を棄損した」「会社法に反して実施的な相対取引を株主総会で決議せずに実行した」「派遣元の三井物産の利益だけを考慮し,コンプライアンス上の問題を引き起こし企業価値を棄損した」の3点を挙げた。(2)に関しては3月19日に質問状を送付。(3)についても同じ質問状で,新たにCEO(最高経営責任者)に就任する予定の須山勇氏に回答を求めた。

 訴訟に関しては, 3月28日に予定する株主総会で質問に対する対応・返答を求め,その内容を見きわめる必要があるとしている。訴訟に踏み切るケースと取りやめるケースのどちらもあり得るとした。イー・アクセスは2月21日に,経営陣の刷新を求めていた株主提案を取り下げると発表。経営を厳しく見守るとしていたが(関連記事),この方針は今後も基本的に同じだという。「新経営陣には,これを機に株主を重視し,公平に取り扱う経営をしてもらいたい」(石田雅之CSO)。

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