Linuxの普及促進や標準化などを行う非営利団体「The Linux Foundation Japan」は2008年3月12日,技術者向けイベント「The Linux Foundation Japan Symposium」を開催した。7回めとなる今回のシンポジウムでは「Business Critical Linux」をテーマに,Linuxのメモリー管理機構やネットワーク・ドライバの最新開発動向,ディストリビューション間のドライバ共通化,クラスタリングなどについての講演があった。2009年に日本で開催予定のカーネル・サミットについての経過発表もあった。

ドライバ共通化の仕組みが必要

米Novell社でLinuxドライバ・プロセス・プロジェクトのリーダーを務めるSusanne Oberhauser氏
写真1●米Novell社でLinuxドライバ・プロセス・プロジェクトのリーダーを務めるSusanne Oberhauser氏
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 最初は,米Novell社でLinuxドライバ・プロセス・プロジェクトのリーダーを務めるSusanne Oberhauser氏(写真1)が講演した。内容は,ディストリビューションで使用するデバイス・ドライバを共通化するための基盤作りを目指して作業中のLinux Foundationワーキンググループの活動報告である。

 Linuxでは,デバイス・ドライバはカーネルに含まれており,ドライバ開発はカーネル開発と不可分に結びついている。最新のドライバは,まず最新版のカーネルに組み入れられる。しかし,最新版のカーネルは安定性などに問題があることもあるため,ディストリビューションでは,それより古いバージョンのカーネルを独自にカスタマイズして利用するのが一般的である。

 そのため,大多数のユーザーが開発されたドライバの恩恵を受けるには別の作業が必要になる。つまりディストリビューションの開発者やデバイス・ベンダーが,独自に古いバージョンのカーネルに「後方移植」する必要がある。

 ところが前述の通り,ディストリビューションのカーネルはそれぞれのベンダーが独自にカスタマイズしている。そのため,ディストリビューションごとに別の移植作業が必要になる。各ディストリビューションで何がどう異なっているかを把握しなければならないので,デバイス・ベンダーにとってはかなり面倒な作業だ。その結果,限られたディストリビューションの特定のバージョンにしか対応しないデバイスというものが多数存在する状況が生まれている。

 ドライバ移植作業を容易にするため,米Red Hat社が「kmod」,米Novell社が「KMP」といったドライバ・パッケージ・フレームワークを提供している。また米IBM社や米Dell社といったシステム・ベンダーも独自のソリューションを開発している。しかしOberhauser氏は,逆にこれらのソリューションの乱立が(来日して食べたという「うどん」を例にあげて)「事態を複雑に絡み合わせている」と指摘し,共通のドライバ開発基盤の必要性を訴えた。

 同ワーキンググループは,ディストリビュータやシステム・ベンダーから幅広い参加者を得ている。現在は,メーリング・リストと2週に1度の電話会議で問題意識を共有したり,大まかな活動方針,作業ステップなどを決定中であるという。詳細な仕様などについては,2008年8月に米国オースチンで開催される「Linux Foundation Collaboration Summit」に集まって詰めていく予定だ。