総務省は2008年3月13日,MVNO(仮想移動体通信事業者)に関する法制度の解釈を整理した「MVNO事業化ガイドライン」(正式名称は「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」)の再改定案を公開した。4月10日まで意見募集し,4月中を目途に改定を目指す。

 MVNOとは移動体通信事業者(MNO)から無線設備を借りて独自ブランドでサービスを提供する事業者のこと。今回公開したガイドラインの再改定案のポイントは,(1)日本通信とNTTドコモの相互接続紛争についての総務大臣による裁定結果の反映(関連記事),(2)MNOのコンタクトポイントの明確化とMVNOの事業計画の聴取範囲の明確化について追記,(3)MVNOの促進が認定条件となった2.5GHz帯の無線ブロードバンド認定事業者などを対象にした項目の追加---の主に3点となる。2007年までに表面化した課題への対応と,2009年以降に本格化する2.5GHz帯の無線ブロードバンドを視野に入れた内容になっている。

 (1)に関しては,MVNOが事業者間接続の形態でサービスを展開する場合,エンドユーザーの料金の設定は「MVNOが料金を設定する形態(エンドエンド料金),MVNOとMNOが分担して料金を設定する形態(ぶつ切り料金)のいずれも可能」という一文を追加している。ただし料金の設定については,一方の当事者によって独自に決定されるものではなく,あくまで「MVNOとMNOの協議に委ねられることが求められる」とした。

 (2)は,2007年に総務省で開催した「モバイルビジネス研究会」の最終報告書(関連記事)で指摘されていた項目。コンタクトポイントの明確化について,事業者間接続,卸電気通信役務の契約形態に関係なく「一元的なコンタクトポイントを設け,MVNOとの協議を適正かつ円滑に行う体制を整備することが望ましい」と記した。

 MVNOに対する聴取範囲の明確化に関してはこれまで,「MVNOの事業計画を把握しなければ安定したネットワーク運用が難しい」というMNOと「MNOにビジネスモデルを知られることで事業計画に支障が出る」というMVNOの間で,意見が対立していた。今回の再改定案では,聴取に理由がある事項と理由がないと考えられる事項を,具体例を挙げることで両者の意見を調整した。例えば,接続を希望する時期や接続形態,予想トラフィックなどは聴取に理由があるとし,逆にMVNOが設定する予定の料金体系や,MVNOが予定する付加価値サービスにかかわる事業計画などは聴取に理由がないとしている。

 (3)については,2.5GHz帯の認定事業者は「MVNOによる無線設備の利用の促進を図るべき」とし,もし促進が図られない場合は「無線局の免許及び再免許の拒否理由になり得る」,「総務大臣による業務改善命令の対象になることがある」といった文言を付加している。総務省は2007年12月末に2.5GHz帯の認定事業者に対して,MVNOへのネットワーク開放計画の履行と四半期ごとの進捗状況の報告を義務化する方針を示した(関連記事)。今回のガイドライン再改定案も,この方針に対応した形になっている。

 MVNO事業化ガイドラインは,MVNOの促進を目指し2002年6月に運用を開始(関連記事)。2007年2月に一部を改正し(関連記事),今回の再改定案は2度目の改正となる。今回の再改定案に先立って,2007年11月末から2008年1月にかけて提案を募集していた(関連記事)。

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