AMDは2008年3月4日、低消費版デュアルコアCPUの新製品「Athlon X2 4850e」を発表した。日経WinPC編集部は同製品を入手、通常版との消費電力の差を測定した。
Athlon X2 4850eは製品名こそ見慣れないが、機能や性能面では既存のAthlon 64 X2シリーズと同じだ。製造プロセスは65nm(ナノメートル)で、命令+データが64KB+64KBの1次キャッシュと512KBの2次キャッシュを備える演算コアを2個搭載している。対応メモリーは最大でDDR2-800。動作周波数は2.5GHzで、TDP(Thermal Design Power:熱設計電力、実使用上の最大消費電力)は45W。4850eは、既存のAthlon 64 X2 4800+(2.5GHz)のTDPを65Wから下げた製品と考えてよい。
これまでAMDはTDP45WのデュアルコアAthlon 64を「Athlon X2 BEシリーズ」として製品展開してきた。1.9GHzのBE-2300、2.1GHzのBE-2350、2.3GHzのBE-2400があり、2.5GHz版は「BE-2450」と言える存在だ。名称の変更についてAMDは、TDP65Wの通常電力版のラインアップとの関連性を持たせるためとしている。新しいナンバーは、通常版と同じ性能を持ちながら、異なる消費電力であることを示している。
Athlon X2 4850eを使ったPCのシステム全体の消費電力を以下の構成で調べてみた。比較するCPUとしては、本来は同じ周波数の4800+が望ましいのだが、機材調達の都合で5000+で調べた。動作周波数は2.6GHzで、4850eより100MHz高い。
【マザーボード】 A780GM-A(ECS、AMD 780G搭載)
【メモリー】 DDR2-800 1GB×2(JEDEC準拠)
【HDD】 Barracuda 7200.10 320GB(Seagate Technology)
【OS】 Windows Vista Ultimate 32ビット日本語版
システム全体の消費電力の変化を調べたのがグラフ1だ。負荷としてFuturemarkのベンチマークソフト「PCMark05」の「Multithreaded Test 2」を使用した。このテストは4スレッドを同時に実行するもので、クアッドコアまでならCPUに非常に高い負荷がかかる。CPUを中心とした負荷時のシステム消費電力を測るのに適している。
見ての通り、4850eを搭載したシステムは5000+のシステムより負荷時で2割弱も消費電力が低くなっている。動作周波数の違いは4%、アプリケーション実行時の性能差はそれよりも小さくなることを考えると、消費電力は確実に低いと言える。アイドル時の消費電力も4850eの方が低い。Athlon 64シリーズは、省電力機能「Cool'n'Quiet」を有効にすると、アイドル時はどれも1GHz、1.100Vで動作する。本誌が過去にテストした限りでは、消費電力が5Wも違うことはあまりなかった。
4850eの価格は89ドル。これは通常版のAthlon 64 X2 4800+と同じで、低消費電力版の下位モデルであるBE-2400(2.3GHz、104ドル)、BE-2350(2.1GHz、91ドル)より安い。BEシリーズが継続販売されるなら、値下げは確実だろう。
消費電力を抑えたPCを作るには、Athlon X2 4850eは魅力的なCPUだと言える。ただ残念なことに、発表から一週間以上たった3月14日時点でも「発売するのは確実だが、時期は未定」(日本AMD)という状態だ。ぜひ早期に発売してほしい。