新しいディスクを搭載した「WD Caviar SE」の320GBモデル。品番は「WD3200AAJS」。回転数は7200回転/分で、キャッシュ容量は8MB。Serial ATA接続。
新しいディスクを搭載した「WD Caviar SE」の320GBモデル。品番は「WD3200AAJS」。回転数は7200回転/分で、キャッシュ容量は8MB。Serial ATA接続。
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ディスクを1枚、ヘッドを2つしか搭載しない。肉抜きされたケース裏側を見るとその薄さが分かる。
ディスクを1枚、ヘッドを2つしか搭載しない。肉抜きされたケース裏側を見るとその薄さが分かる。
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3月の1週目に発売され、価格は7000円台前半と、従来の320GBモデルとほぼ同等の価格。
3月の1週目に発売され、価格は7000円台前半と、従来の320GBモデルとほぼ同等の価格。
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SiSoftwareの「Sandra 2007」によるベンチマークテスト。従来モデルで最大の1枚当たり250GBの記録密度のディスクを積んだドライブとの性能を比較した。
SiSoftwareの「Sandra 2007」によるベンチマークテスト。従来モデルで最大の1枚当たり250GBの記録密度のディスクを積んだドライブとの性能を比較した。
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 2008年3月6日、容量320GBの新しいHDDが秋葉原の店頭に並んだ。一見すると何の変哲もないが、この米Western Digitalの「WD3200AAJS」は、1枚当たりの容量が320GBという、高い記録密度のディスク(プラッター)を搭載している。

 これまで3.5インチディスクの記録密度は、米Seagate Technology、日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST)、Western Digitalの3社が250GB/ディスクで横並びの状況だった。そして2007年6月、昭和電工が1枚当たり最大334GBのディスクの量産化に成功。韓国Samsung Electronicsがこのディスクを3枚搭載した1TBモデル「Spin Point F1」の製造を発表したが、まだ一部のOEM出荷のみで、店頭での販売には至っていない。今回のWD3200AAJSもこのディスクを搭載しているとみられる。

 通常、HDDには1~5枚のディスクと、その2倍の数のヘッドが搭載されている。WD3200AAJSは320GBのディスク1枚と2つのヘッドしか搭載していないため、部品点数が大変少ない。HDDを裏返してみると、ケースが大きく肉抜きしてあることが分かる。部品点数の少なさは製造コストに直結する。WD3200AAJSの実勢価格は7300円程度。各社の320GBモデルの中でも比較的安い部類に入る。

250GB/ディスクより1割速い

 高密度なディスクで最も期待されるのは、その読み書きの速さだ。HDDは記録密度が上がれば、1回転当たりに読み取れるデータ量が増える。ディスクの回転数が同じ7200回転/分なら、記録密度が高いほど読み書きが速くなる。

 日経WinPC編集部では早速WD3200AAJSの実機を入手し、性能を測定した。比較対象としたのはSeagateの「Barracuda 7200.11」と、Western Digitalの「WD Caviar GP」のそれぞれ1TBモデル。HGSTの「Deskstar P7K500」の500GBモデル。いずれも1枚当たり250GBの記憶容量を持つ、トップクラスのHDDだ。

 Deskstarだけ500GBモデルを選んだ理由は、1TBモデルの7K1000は200GB×5枚の構成となり、記録密度の条件がそろわないため。なお、WD Caviar GPは低消費電力を優先した「Green Power」モデルなので、回転数が約5400回転/分とほかのモデル(7200回転/分)より低い。

 ベンチマークテストはSiSoftwareの「Sandra 2007 Lite」にある「File Systems」を実行した。その中から直感的に分かりやすい、連続読み出し/書き込み、ランダム読み出し/書き込みの結果を抜き出したのが右のグラフだ。

 結果を見ると、WD3200AAJSは連続読み出しが109MB/秒と突出して速いことが分かる。特に連続読み出し/書き込みはヘッドをあまり動かさないため、記録密度の違いによる性能差が出やすい。日経WinPC編集部で今までテストしてきた中では最速だったBarracuda 7200.11の1TBモデルを、1割近く上回った。

 現在、320GBディスクを搭載していて、エンドユーザーが購入できるモデルは、このWD3200AAJSだけだ。だが3月末ごろにはこのディスクを2枚搭載した640GBモデルの投入が計画されている。順調にいけば、ディスクを3枚使った1TBモデルも登場する見通しだ。

 640GBモデルのディスク構成は現在の500GBモデル(250GB×2枚)と同じ。1TBモデルなら現在の750GBモデル(250GB×3枚)と同じ構成で済むことになる。これらの新型が登場すれば、性能はもちろん、価格面でも話題を呼ぶことになりそうだ。