Webブラウザで米Microsoftと競合しているノルウェーOpera Softwareの最高技術責任者(CTO)であるHakon Wium Lie氏は,「Microsoftは先ごろWeb標準に則ったレンダリング動作モードを次期Webブラウザ『Internet Explorer(IE)8』のデフォルト・モードにすると決定したが,当社が行った欧州連合(EU)の独占禁止法(独禁法)当局に対する申し立てへの回答としては不十分」と述べた(関連記事:Microsoftが「IE 8」で方針変更,Web標準レンダリング動作がデフォルトに)。

 Operaが挙げている「Lie氏の考える,EUによる指導でMicrosoftが対処すべき技術的問題」のなかには,「IE 8のWeb標準互換性テストAcid2完全準拠」という項目が存在する。「IE 8がAcid2に対応し,ほかのWebブラウザと同様の仕組みで標準レンダリング・モードを起動することは,(当社の申し立てた)問題の一部解決になる。ただし,まだ重要な点が残っている」(Lie氏)。

 Lie氏が未解決と主張する重要事項には,MicrosoftがIEの標準技術対応に関して文書化することと,競合Webブラウザ・ベンダー2社以上に採用されている標準技術を同じく対応すること,といった項目がある。さらに,IE 8がAcid2テストに合格したのなら,検査内容を文書で示すことも求めた。Operaは申し立てで――10年近くも前に米国で起きたMicrosoftに対する独禁法訴訟を思い出させる――Windowsに対するIEバンドルを違法行為としている(関連記事:Opera,MicrosoftをECに提訴,WindowsへのIEバンドル禁止などを要求)。

 Microsoftは,それまでの方針(関連記事:Microsoftの次期ブラウザ「IE 8」は,Web標準よりも旧IEとの互換性を重視)を覆してIE 8の標準レンダリング・モードをデフォルトにするという決定を2008年3月3日(米国時間)に発表した際,方針変更に法的な意味があると指摘した。Microsoft上級副社長兼顧問弁護士のBrad Smith氏は,発表のなかで「現在のところ,Webブラウザのデフォルト・レンダリング・モード決定を規制する法律は存在しないはず」と述べたが,「(標準レンダリング・モードをデフォルトにする)今回の方針転換で,法律や規制にかかわる潜在的な問題を一掃できる」とした。

 Microsoftは独禁法にかかわる問題を振り払おうと懸命だ。ただし,残念ながらOperaやその他ライバル企業は,欧州委員会(EC)内に熱心で意欲的な仲間がいることに気付いてしまった。ECはこの数カ月のあいだに,改めてMicrosoftに対する3件の調査を開始したのだ(関連記事:欧州委員会,反競争法の疑いでMicrosoftに対して新たに2件の調査)。