総務省は2008年3月6日,情報通信審議会で議論しているNGN(次世代ネットワーク)の接続ルールの答申案に対する意見募集の結果を公表した。通信事業者をはじめ,工事業者や弁護士,個人などから計145件の意見が寄せられた。ただし,内容を確認すると文面がほとんど同じものが多々あった。

 意見は光ファイバの1分岐貸しに対するものが大半を占めた。ソフトバンクは「FTTH市場におけるNTT東西の独占化傾向は電気通信市場を今後取り返しのつかない危機的な状況に陥れるもの。設備の共用による1分岐単位の貸し出し,もしくはNTT東西のアクセス網の構造分離(または実質的な機能分離)が必要」と主張した。

 KDDIはソフトバンクと異なり,設備を専有したまま1分岐単位の接続料を設定することを要望している。「今回の答申で結論が先送りされるのであればネットワークのオープン化措置が不十分となり,活用業務の認可条件となっている『公正競争の確保に支障を及ぼすおそれ』が解消されないことになるので,活用業務の認可を取り消すべき」とする。

 NTT東西は,「新サービスの提供やサービス品質に支障が出る」「設備競争とサービス競争の適正なバランスが図れなくなる」といった点から1分岐貸しに断固反対の姿勢である。総務省の折衷案(関連記事)に対しても「不条理な利用を促進する料金体系」と拒否している。

 電力系事業者やCATV事業者も1分岐貸しに反対である。1分岐貸しが実現して料金の低廉化が進むと「対抗値下げの余力はなく,早晩市場退出を余儀なくされる」という危機感がある。「NTT独占への回帰を招く」「設備競争の否定していることになる」といった不満を訴えている。特に日本ケーブルテレビ連盟をはじめとするCATV事業者からの意見が数多くあった。

「独占禁止法上,問題がある」

 このほか,日比谷パーク法律事務所やTMI総合法律事務所といった弁護士からは独占禁止法の観点で問題とする指摘が出た。「現状の戸建て住宅向けFTTH市場において,OSU(optical subscriber unit)の共用による分岐端末回線単位の貸し出しを拒否しているNTT東西の行為は独占禁止法上,違法のおそれが著しく高いものと思料する」といった意見である。

 日本コムシスや協和エクシオといった光ファイバの敷設業者による意見も目立った。1心の光ファイバを複数の事業者で共用すると「故障修理や支障移転の際に事業者ごとのユーザー対応が必要になり,トータルで今までより多大な対応時間を要することが想定される。工事・故障修理時間に大きな影響が出てサービス・レベルの低下を招く」「工事が複雑になるのでユーザー料金に影響することが予想される。ひいてはブロードバンドの発展を阻害しかねない」と,工事面から1分岐貸しに反対している。

 情報通信審議会はこれらの意見を踏まえ,3月17日の接続委員会で議論する予定である。2008年度以降の光ファイバ接続料の改定(関連記事)とセットで検討する。

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