写真1●Internet Explorer担当のGeneral ManagerであるDean Hachamovitch氏
写真1●Internet Explorer担当のGeneral ManagerであるDean Hachamovitch氏
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 米Microsoftが3月5日(米国時間)にベータ版を公開した「Internet Explorer 8」は,意欲的な新バージョンである。業界標準への準拠を強く意識しているほか,「セマンティックWeb」を実現する新技術も搭載する。その一方でIE8は,下位互換性の問題や新たな規格争いを引き起こす可能性がある。

 Internet Explorer 8の詳細は,同日米国Las Vegasで開幕したWeb開発者会議「Microsoft MIX 08」の基調講演で初めて公開された。また同時にベータ版(英語のみ)がWebサイトで一般に公開されている。基調講演でデモを披露したInternet Explorer担当のGeneral ManagerであるDean Hachamovitch氏(写真1)は,IE8には先進的なポイントが8つあると紹介する。それらを詳しく見てみよう。

「業界標準に対応する」と宣言

 まず第1点は,「CSS 2.1」への“完全”対応である。基調講演でHachamovitch氏は,FirefoxやSafariで正しく表示されているのに,IE7では乱れて表示されるWebサイトを紹介し(写真2と3),IE7が標準に完全に対応し切れていない点と合わせて,「ブラウザごとにデバッグが必要になることが,開発者の時間を奪っている」と指摘。IE8ではCSS 2.1に完全に対応することで,前述のWebサイトを正常に表示できることを示した。

写真2●Firefoxでは正しく表示できるWebサイト   写真3●IE7では乱れて表示される
写真2●Firefoxでは正しく表示できるWebサイト
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  写真3●IE7では乱れて表示される
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写真4●IE8に搭載される「IE7エミュレート」ボタン
写真4●IE8に搭載される「IE7エミュレート」ボタン
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 Hachamovitch氏は第2点でも「CSS仕様の尊重」を挙げ,「IE8は,702個に及ぶ業界標準のテストをクリアしている」とアピールした。しかし,IE8の仕様が変わったということは,既存のIEでの表示に特化したWebサイトが,IE8で乱れて表示される可能性がある。この問題に対応するためIE8には「IE 7エミュレート・モード」が搭載されている。ブラウザ上部にある「互換ボタン」(写真4)をクリックするだけで,IE7と同じ仕様でWebブラウザを表示できる。


バック・ボタンで「Ajaxアプリの操作をやり直し」

 第3点は,パフォーマンスである。IE7はWebページのレンダリングやAjaxアプリケーションの実行速度で,FirefoxやSafariの後塵(じん)を拝している。IE8ではパフォーマンスの徹底的な見直しを図っており,「ベータ版の段階でありながら,各種のベンチマークで,競合ブラウザに匹敵するスコアを出している」(Hachamovitch氏)とアピールした(写真5)。

写真5●ベンチマークのスコアがFirefoxやSafariに迫ったと強調した   写真5●ベンチマークのスコアがFirefoxやSafariに迫ったと強調した
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戻るボタンで「Ajaxアプリの操作をやり直し」

 第4点は「HTML 5」への対応である。HTML 5に対応することで可能になる機能としてHachamovitch氏は「Ajaxナビゲーション」と「オフライン・サポート」を挙げた。

 Ajaxナビゲーションとは例えば,ブラウザの「戻る」ボタンで「Ajaxアプリケーションの操作を戻す」ことである。現在,Google MapsのようなAjaxアプリケーションをIE7で利用している際に「戻る」ボタンをクリックすると,Ajaxアプリケーションを使う前のページに「戻って」しまう。しかしIE8では,Ajaxアプリケーションで操作(地図のズームインなど)を行った後に「戻る」ボタンをクリックすると,「操作する前の状態」に画面表示が戻る。

動画●IE8ではブラウザの「戻る」ボタンで,Ajaxアプリケーションの操作を戻せるようになる

 もう1つのオフライン・サポートとは,Ajaxアプリケーションがネットワーク接続状況に応じて振る舞いを変化できるようにする機能である。基調講演でHachamovitch氏が行ったデモでは,Ajaxアプリケーションはネットワークが切断されると,それを検出するだけでなく,その時点のデータを一時的にローカルに保存した。ネットワークが再接続されると,切断前の状態から作業を再開できる。

 Hachamovitch氏が紹介した第5点は,開発者向けのデバッグ・ツールである。IE8には,HTMLやCSS,Javascriptの誤りを見つけるデバッグ・ツールが標準で搭載される。Webページの一部分を選択してデバッグ・ボタンをクリックすると,その部分だけがデバッグできるので便利だ。