「Prismは,ブラウザとOSの境界線を曖昧にする技術」---米Mozillaの研究部門であるMozilla LabsのVice President Christopher Beard氏は2008年2月29日,オープンソースカンファレンス(OSC)2008 Tokyo/Springで「The Future of the Web(Webの未来)」と題し,同社が開発中の技術を披露した。オープンソースカンファレンスは,さまざまなオープンソース・コミュニティが集まって開催しているイベントで,OSC2008 Tokyo/Springは2月29日から3月1日の2日間行われている。
Moziila Labsが開発している技術のひとつ「Prism」は,Web上のサービスをデスクトップのアプリケーションのように使用できるようにする技術だ。すなわち,Webサイトをデスクトップのアイコンや,Windowsのスタート・メニューから起動できるようにする。「Webサービス側では何も変更する必要がない」(Beard氏)。以前はWebrunnerという名称で開発されていたものだ。現在,Windows,MacOS X,Linux向けにバージョン0.8が公開されている。
「ブラウザとWebサービスの境界を曖昧にする」(Beard氏)のが「Personas for firefox」だ。「コアのブラウザの機能をWebサービスににする技術」(Beard氏)。Firefoxはテーマにより外観を変えることができるが,personasでは,ブラウザを再起動することなく外観を変えることができる。「ブラウザはユーザー・インタフェースのコンパイラのような役割を果たす」(Beard氏)。Firefoxの拡張として提供され,現在バージョン0.9.2が公開されている。
「Weave」は,データをユーザーが使う様々な機器で共有し,かつユーザー同士でも共有できるようにする技術だ。「まずブックマークやカスタマイズや履歴,IDをネットワーク上にバックアップし,リストアできるようにする。ユーザー体験を持ち運ぶことを可能にする」(Beard氏)。また,ブックマークは友人が参照できるようにする。
セキュリティ確保のため,データはデフォルトで暗号化する。「現在のバージョン0.1ではセキュリティが完全とは言えないが,1.0では完全にする。オープンソース・プロジェクトでは早くリリースすることが重要。完全でなくとも,コードを公開すれば,問題を修正したり,アイデアを寄せてくれる人が出てくる」(Beard氏)。現在Basic認証に対応しているが,OpenIDにもおそらく対応するという。
また自然言語インタフェースも開発中だ。「例えば『自分の犬の写真を挿入しろ(Insert my dog photo)』と打ち込めば,flickrから犬のタグの付いている写真を選んで挿入してくれる」(Beard氏)。
Beard氏は「今日紹介した技術は一例にすぎない。興味がある人はぜひMozilla Labsのサイトにアクセスして,積極的に参加してほしい」と呼びかけた。「Webはプラットフォームであり,ユーザー・エクスペアリエンスを拡大していくためにさらなる改良が必要だ」(Beard氏)。
「Webの発展のためには,そこは囲い込まれた閉鎖的な場所であってはならないし,カオスであってもいけない。秩序とカオスのバランスをとらねばならない。オープンソースとオープンスタンダードがそのためのカギになる」(Beard氏)。
【訂正】
初出時「personasでは,ブラウザだけでなく,コンテンツの外観も変えることができる」と記述しておりましたが,正しくは「personasでは,ブラウザを再起動することなく外観を変えることができる」です。お詫びして訂正いたします。