NECとNECアジアは2008年2月22日,日本とシンガポールの間で無線IP内線電話のローミング実験を実施すると発表した。総務省の「国際情報通信ハブ形成のための高度ICT共同実験」の一環として,2月25日から3月7日まで実験する。実験場所は日本の情報通信研究機構の大手町ラボ,シンガポールのNECアジアおよびシンガポールテレコム。

 実験ではまず,日本のオフィスで使っている無線IP内線電話を海外に持ち出して,海外オフィスの無線LANにつないだときに,日本のオフィスときちんと内線通話ができるかを検証する。無線IP電話機は,NTTドコモのFOMA/無線LANデュアル端末「N902iL」を使用。SIPサーバーは,大手町ラボにOKI(沖電気工業)の「IP CONVERGENCE Server SS9100」,NECアジアにNECの「UNIVERGE SV7000」を設置し,これらをSIPで相互接続する。異なるベンダーの機器を混在させて,マルチベンダー環境でも無線IP内線電話の位置情報を正しくやり取りしてローミングを成立させられるかを試す。また,NECアジアに置いたSV7000をシンガポールテレコムのSIPサーバーにつないで,相互接続性を検証する。

 これらの実験内容が商用化できれば,携帯電話事業者が提供中の国際ローミング・サービスと無線IP内線電話のローミングを組み合わせた“国際版モバイル・セントレックス”のようなサービスを実現できる。NECはこの実証実験の結果を踏まえて,無線IP電話の位置情報をSIPサーバー間で管理する仕組みを自社製品に適用し,無線IP電話のローミングのソリューションを国内外で提供していく計画。

 今回,実験場所にシンガポールを選んだのは,無線IP電話を家庭やホットスポットの無線LAN環境で使えるサービスが商用またはトライアルで使えるなど,無線LAN環境の整備が同国では先行しているため。

 なお今回の実験では,無線LANと3G/GSMに対応しVoIP機能を持つ「Nokia E51」を使い,シンガポールの家庭内にある無線LANアクセス・ポイントや公衆無線LANサービスを利用した無線IP電話の外線通話が可能かや,NECアジアにあるSV7000を利用した無線IP内線通話が可能かも検証する。またN902iLとは逆に,Nokia E51を日本に持ち込んでローミングできるかもテストする計画だという。

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