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CE Linux Forum アーキテクチャグループ・チェア Tim Bird氏
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 家電向けLinuxの国際的なコミュニティThe Consumer Electronics Linux Forum (CELF)は2月21日,海外のカーネル開発者も招いたイベント「Japan Super Jamboree(JapanTechnicalJamboree19)」を東京で開催した。

 CE Linux Forum アーキテクチャグループ・チェアで米SonyのエンジニアでもあるTim Bird氏は「Status of Embedded Linux」と題して講演し,組み込みシステムから見て興味深い技術としてメモリー管理やKpagemapやLatency measurement API,アクセスコントロールのSmack,セキュアOSのTOMOYO Linuxなどをあげた。CE Linux ForumではTechnology_Watch_Listとして注目すべき技術のリストをあげている。

 フラッシュメモリー向けファイルシステムなどの開発を行っている米Red HatのDavid Woodhouse氏は「カーネル2.6.24には1014人の開発者から10353件のコミットが行われた」とカーネル・コミュニティの拡大を報告。コードをカーネル・メーリングリストに送り“upstream”することで,コードがテストされ品質が向上する,カーネル本体に取り込まれれば変更部分を自社で保守する必要がなくななるなどのメリットがあると指摘した。

 ルネサステクノロジのPaul Mundt氏は「Asymmetric NUMA」と題して,共有メモリー型マルチプロセッサNUMA(Non-Uniform Memory Access、Non-Uniform Memory Architecture)向け機能を,組み込みシステムのメモリー管理に利用する方法を紹介した。NUMAではプロセッサがローカルにメモリーを持ち,他のプロセッサのメモリーにも遅くはなるが同じメモリー空間の一部としてアクセスできる。ルネサスでは,同社のプロセッサに内蔵した高速なSRAMを,優先すべきプロセスに割り当てて使用するため,LinuxのNUMA機能を拡張したという。

 トライピークスの湯浅陽一氏は,2008年1月に公開したアプリケーション時間計測ツール「TP TimeMeasure」を紹介した。アプリケーションを変更する必要がなく,オーバーヘッドも低いという。

 東芝の上床克樹氏は,フラッシュメモリー向けファイル・システムJFFS2, YAFFS, LogFSのパフォーマンス計測を行った結果を報告した。

 またイーゲルの松原克弥氏は,「ここまで来ているリナックスのリアルタイム性能」と題し,Linuxの特性を理解することで,そのリアルタイム性能を引き出すことができると指摘。プロセス・スケジューラの動作原理などを解説した(発表資料)。

 NECの柴田次一氏は「Linuxコミュニティの現状と注意点」と題し,Linuxコミュニティに参加する方法などを解説した。

 CE Linux Forumマーケティング・チェアの上田理氏は,CE Linuxのメンバーで議論してまとめたプレゼン「組込みシステム構築にリナックスを使う真価は何か」を紹介した。現在携帯電話,デジタルテレビ,レコーダなど様々な組み込み機器にLinuxが採用され,そのソースコードが公開されている(関連記事)。ソースコードに留まらず,起動の高速化やメモリーサイズ削減に関するノウハウもCE Linuxのイベントなどで惜しげもなく公表されている。なぜノウハウまで公開するのか。「GPLの配布条件を満たすためだけであればソースを置いておけば済む。ノウハウまで公開するのは,それがLinuxを使う真価だからだ」(上田氏)。

 実際に公開によるメリットを享受した例も多い。例えばアプリケーションの起動を高速化する技術prelinkについて,ある開発者が発表し,未対応のプロセッサについて発表会場で情報を募ったら,その場で協力者があらわれ,欲しい機能が短期間で開発できたという。またカーネル2.4向けの膨大なバグ修正パッチをある技術者が公開したところ,別の企業の技術者がそれをカーネル2.6に対応させた。

 「コードやノウハウを公開すれば,ライバル企業同士さえ協力しあうことができ,短期間に機能や信頼性を高められる」,それがLinuxを使うことの真価だと上田氏は言う。

 このプレゼンは,翌日韓国ソウルで開催されるCE Linux ForumのイベントThe 2nd Korea Technical Jamboreeでも紹介される予定である。

 当日の発表資料はCE Linux ForumのJapanTechnicalJamboree19のページに掲載されている。