米Microsoftは2月21日(米国時間),他社製品との相互運用性を向上させる取り組みを強化し,従来は秘密保持契約を結んだパートナーにのみ提供していたプロトコルやAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)に関する技術情報を,無償で公開する方針を発表した。同日,同社のWebサイトで3万ページに及ぶ技術情報を公開した。

 同社によれば今回開示した技術情報は,Windows Vistaや.NET Framework,Windows Server 2008,SQL Server 2008,Office 2007,Exchange Server 2007,Office SharePoint Server 2007の通信プロトコルやAPIに関するもの。今後も同社の主要製品に関しては,同様の方針で情報を公開するとしている。オープンソース・コミュニティを含む他の開発者が技術情報を基に機能を実装しても,Microsoftに対するロイヤリティなどの支払いは発生しない。

 例えば同社では2007年末に,「1万ドルの情報閲覧料を1度だけ支払えば,Windows Serverの通信プロトコルに関する情報を公開する」という情報公開プログラムを開始した(関連記事:顧客が支持しているのは「Open XML」,ISO標準化にも自信--MSの標準化担当幹部),このような技術情報が今後は無償で公開されることになる。

 同社は2月16日(米国時間)に,バイナリ形式のOffice文書仕様(Office 97以降のOfficeファイル形式)も無償で公開しており(関連記事:米Microsoftがついに,バイナリ形式のOffice文書仕様を公開),情報公開がこれでさらに加速した。

Officeに相互運用性目的の新APIを追加

 またMicrosoftは今回,Office 2007に新しいAPIを追加する計画も表明した。この新APIは,Office 2007の各アプリケーション(Word,Excel,PowerPoint)で任意のデータ形式を編集するプラグインを,サード・パーティが開発するためのもの。例えば,「Word 2007で一太郎形式のファイルを開くプラグインを,ジャストシステムが開発して配布する」といったことが,ロイヤリティなどの支払いなしに可能になる。

 Microsoftは今回の発表に合わせて,相互運用性に関する原則も明らかにした。1つ目の原則は「Microsoft製品に他社の製品が自由に接続できる(Open Connections to Microsoft Products)」というもので,プロトコルやAPIをオープンにするほか,それらの技術情報も広く公開するとしている。

 また,プロトコルのいくつかは特許によって保護されているが,それらのロイヤリティを可能な限り低くするほか,ロイヤリティに関する契約を平等なもの(ベンダーによって差を付けないもの)にするとしている。特許に抵触するものでも,それがオープンなAPIを通じて呼び出される場合は,ロイヤリティは発生しない。

 2つ目の原則は「標準をサポートする(Support for Standards)」というもので,既存の国際標準などを順守するとしている。3つ目の原則は,「データを持ち運び可能にする(Data Portability)」というもので,業界標準のファイル仕様のサポートや,ファイル仕様情報の公開などが含まれる。また,各アプリケーションにおけるデータのインポート機能やエクスポート機能を強化するだけでなく,各アプリケーションがデフォルトで使用するデータ形式を,ユーザーやサード・パーティが自由に変更できるようにする。

 4つ目の原則は「他者との連携の強化(Open Engagement)」で,相互運用性を向上させるためのベンダー組織や,オープン・ソース・コミュニティとの連携を強化するとしている。