写真●HD DVD事業の終了を正式発表する東芝の西田厚聰社長
写真●HD DVD事業の終了を正式発表する東芝の西田厚聰社長
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 東芝は2008年2月19日,HD DVD事業を終了すると正式に発表した。HD DVDプレイヤーやレコーダーだけでなく,パソコンやゲーム機向けのHD DVDドライブに関しても新製品の開発と生産を終了する。流通への出荷も3月末に終了する。

 東芝の西田厚聰社長(写真)は同日の記者会見で,「1991年に資本提携を行い,HD DVDサポートに関しても契約関係のあった米Warner Bros.から,2008年1月に突然の方針変更が説明され,残念ながら競争環境は変化した。これ以上HD DVD事業を継続することは経営に大きな影響が生じると判断し,HD DVD事業を終息させることを決定した」と述べた。

寝耳に水だったWarnerの方針転換

 西田社長は加えて,「2007年12月末の段階では,次世代DVDプレイヤーの売り上げに占めるシェアは,当社の方が高かった。またパソコン搭載のHD DVDドライブも,これから増産を始めて一気にシェアを拡げる考えだった。そういう段階での(Warnerの)方針転換は寝耳に水であり,Warnerがいなくなった後に,HD DVDに固執して細々と続けるのでは消費者に迷惑をかける。競争という観点からも勝ち目は無いと判断し,事業を終息した」と状況を説明している。

 今後のAV機器事業に関しては,現行のDVDプレイヤー/レコーダー事業を継続するが,Blu-rayを採用した次世代DVDプレイヤーやレコーダーに関しては「販売する計画は無い」(西田社長)という。また今後は,「半導体NANDフラッシュ・メモリーや小型HDDといったストレージ,画像処理技術,無線技術,暗号処理などの強みを生かした,デジタル・コンバージェンス世代に適した事業を検討する」(同)とした。

 東芝は同時に,HD DVD事業の統計数値も公表した。HD DVDプレイヤーの販売台数は,全世界で70万台。内訳は米国が60万台,欧州が10万台,日本が1万台である。HD DVDレコーダーは日本国内で2万台を販売した。Xbox 360用外付けHD DVDドライブの販売台数は「おおよそ30万台ぐらい」(西田社長)。HD DVDドライブを搭載したパソコンの販売台数は,全世界で30万台,うち北米が14万台,欧州が13万台,日本が2万台だという。

修理やアフター・サービスは,製造終了後8年まで継続

 これらHD DVDプレイヤー/レコーダーの既存ユーザーに対しては「コールセンターの強化を図るなどして,安心して使えるよう,万全のサポート体制をとる」(西田社長)としている。修理やアフター・サービスは,製造終了後8年まで継続する。HD DVDの記録ディスクに関しても,東芝はディスクを販売していないが「ユーザーが一定期間ディスクを入手できるよう,ディスク・メーカーと協議して,東芝のオンライン・ショッピング・サイトなどで販売することを検討する」(同)と述べた。

 同社では同時に,1兆7000億円を投じてNANDフラッシュの製造拠点を2件新設することも発表した。三重県四日市市と岩手県北上市に製造拠点を新設し,パートナーの米SanDiskと合わせて,NANDフラッシュ市場シェアの40%を狙うとした。

 HD DVDの撤退と,NANDフラッシュへの大規模投資の双方を同時に決断したことに関して西田社長は「環境の変化をいち早くとらえて,先手をとって対応することが必要だと決断した」と,決断のスピードを強調した。

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