米連邦地方裁判所の裁判官であるColleen Kollar-Kotelly氏は2008年1月30日(米国時間),裁判所による米Microsoftの監視期間を2年間延長し,2009年11月12日まで続けると決定した。米国で下された独占禁止法(独禁法)違反判決にともなう和解条件を,Microsoftが何年ものあいだ完全には満たさずにいたからである。

 米連邦政府は,Microsoftとの係争で2002年に独禁法違反判決が下されてから5年間,2007年11月までの予定でMicrosoftの活動を監視してきた。ところが,この係争に関係した複数の州が「Microsoftはいまだに独占法に違反する行為を続けている」と主張し,Kollar-Kotelly氏に5年間の期間延長を求めたのだ。これに対し,ほかの州と米司法省(DOJ)は監視期間の延長に反対し,判決をそのまま受け入れるべきと述べた。

 Kollar-Kotelly氏は2007年11月,期間延長の是非を検討する目的で,監視活動終了を暫定的に延期していた(関連記事:対Microsoft監視期間の延長を求めて“カリフォルニア・グループ”が提訴)。明らかにKollar-Kotelly氏は,連邦政府によるMicrosoftの監視を終わらせようと考えていたのだ。しかし,今回の期間延長を申し渡した文書のなかで「Microsoftが前回の判決で要求された和解条件にいまだ従っていないため,延長せざるを得なかった」と指摘した。

 Microsoftは,サーバーとの相互接続に必要な情報が記載された技術文書を,競合企業に提供するよう求められていた。「Microsoftは5年間の監視期間中,何度も提供先送りを図り,いまだに十分な内容の文書を提出していない」(同氏)。ただし,同氏は延長を決めたが,延長支持派ではない。Microsoftの態度を「極めて協力的であった」と評価しているのだ。

 この評価は興味深い。当初,技術文書の提出期限は5年も前の2003年2月だった。筆者が見たところ,Microsoftは米国および米国外におけるすべての独禁法違反問題で条件順守を可能な限り先延ばししようと,あらゆる手段をとってきた。この数年だけに限ると,「Windows Vista」の開発で特に目立ったのは,全世界の独占禁止規定を守る努力を惜しまなかった姿勢だ。

 いずれにしろ,Kollar-Kotelly氏の決定で延長支持派と反対派の溝はますます深まる。支持派州の集まり“カリフォルニア・グループ”は5年間の延長を求めたが,Kollar-Kotelly氏は2年間にとどめた。Microsoftは,最初の期限から7年も遅れて技術文書を提出し,問題を済んだことにしてしまうだろう。