写真1●第2回モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(仮称)準備委員会
写真1●第2回モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(仮称)準備委員会
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 2008年3月の発足に向け準備中の違法・有害情報からの青少年の保護を目的とする第三者機関「モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(仮称)」は2008年1月31日,三者機関の組織体制や健全なサイトを認証・監査する基準案の是非を議論する第2回準備委員会を開催(写真1)。例として提示したコミュニティ・サイトの基準案について,参加した通信事業者やコンテンツ事業者から賛否の声が上がった。

 組織については,放送倫理・番組向上機構(BPO)や日本広告審査機構(JARO)といった既存の第三者機関を参考に,基準策定や審査・運用について消費者の視点で意見する一般公募の諮問会議を設けること,収入は会費および審査料でまかなうこと,といった大枠を示した。有限責任中間法人として2008年3月末までに設立。同年4月に審査・運用監視業務を始め,2008年12月1日施行の公益法人制度改革関連法により一般社団法人に移行する。

 基準案については,共通基準や企業のサイト向けなど複数ある基準案の中から,SNSやブログなどのコミュニティ分野のサイトを対象とする「コミュニティサイト健全運営認証基準(案)」を「健全コミュニティ検討WG」リーダーの鎌田真樹子・魔法のiらんどアイポリスグループ マネージャーが説明。

 主要な項目として,「会員規約の有無及び会員による同意の要否」のような一般的な内容から,「不適切書き込みに対する削除所要時間」といった数値目標を持つ内容まで12項目を用意する計画を明らかにした。具体的な目標に関しては,まず「大規模商用サイト」向けを最も厳格な基準としたうえで,「中規模商用サイト」,「小規模商用サイト」については,基準を緩めながら下方展開する方向性を示した。

認証取得の費用対効果に懸念

 有害情報を排除するには,人海戦術によるサイト巡回や自然言語処理が可能な検知システムが不可欠。コミュニティ・サイトはユーザー数がその価値を決めることもあり,基準値によっては経営悪化を招きかねない。しかし有害情報の放置は長期的にサイトの価値を損なうのも事実だ。このため基準案の矢面に立つコンテンツ・プロバイダの参加者からは,今後具体化する基準案に対する不安の声が上がった。

 例えば300万超のユーザーを抱えるSNS大手グリーの青柳直樹取締役は,「グリーでは月に1000万円を超える規模の費用をかけて有害情報への対策を施している。さらに大規模なサイトでは,費用対効果の面で問題が出てくるのではないか」と,数値目標を達成するための費用が膨大になりかねない基準案に懸念を示した。また,中小規模サイト向けでは基準値を緩める方向ではあるものの,「有害情報対策の費用がかさむことで新しいサービスが出てこなくなる可能性がある」と指摘した。

 一方で,日本エンタープライズの植田勝典社長のように「対策が後手に回った。これ以上事件が起きないよう,基準は厳しめにすべき」と意見も。そもそも基準を満たした結果の認証が,携帯フィルタリングの対象から外れるかは公式サイトなら携帯電話事業者が,公式メニュー外の一般サイトであればフィルタリング・サービスを提供する事業者次第というシステム上の課題がある。総じて会合当日に提示された基準案について意見を交換するにとどまった。

 基準案は正式発足後の承認を経て,2008年4月から審査を始める計画。具体的な数値をつめた基準案が示される次回以降の会合での議論は,さらに白熱したものとなりそうだ。

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