「ソフトは1人で作るほうがいい?」をテーマにしたプログラマ3名による対談が,東京ビッグサイトで開催中の「ITpro EXPO 2008」のセミナー会場で行われた。登壇したのは,ドキュメント自動生成ツール【A HotDocument】を開発した今井浩司氏,Webアプリケーション「Clogger.jp」を開発した高倉真一氏,日経ソフトウエアで連載コラム「フリー・プログラマの華麗な生活」を8年以上続けている中條達雄氏である。
3人はいずれも,ソフトウエアをグループではなく,1人で開発している“1人プログラマ”である。ただし,今井氏は開発したプログラムの販売まで手がける社長,高倉氏はグレープシティというソフトウエア開発会社に勤務するサラリーマン,中條氏はフリー・プログラマと立場が異なる。この3人が共通して語ったのは「1人でソフトを作るには情熱が必要」だった。
対談では,「どうして1人でソフトを開発するようになったのか?」「1人プログラマの資質は?」「苦労したことは?」「メリット/デメリットは?」といった質問に答える形式で行われた。
今井氏は「売りたいものを作りたいと思ったら,すべてを自分でやりたい。そうすれば,最終的に売れなかったとしても満足できる」と,情熱を持って開発を行う姿勢を強調した。特に販売や宣伝活動も自分で行えば,「開発中のこだわりをアピールできる」「リリースのタイミングをはかって,自分の力量を考えながら機能の取捨選択をしやすい」と1人プログラマの良さを紹介した。
高倉氏は「こんなことをできたらいいなと信じて開発を行う。ユーザーからのフィードバッグに喜びを感じやすいし,1人で開発したほうが満足度が大きい」と言う。また,自身が開発したClogger.jpについて,「これからもユーザー数を増やしていきたい。Clogger.jpは私の作品。今後も担当は外されたくない」と思い入れも大きい。
中條氏は「『1人でこんなものを作りたい』と思うことが重要。ある意味,強引さに近い情熱が必要」と語った。
1人で開発するうえで困る点は,「この新技術を使ってよいのか,方向性は正しいのかが不安になる」(高倉氏),「止める人がいないので働き過ぎてしまう」(今井氏),「開発途中でミスがあったり,機能を盛り込めなかったときでも報酬を請求するのがツライ」(中條氏)と多様なコメントが出た。
サラリーマンから経営者になった今井氏は,独立したデメリットとして「何万円もするセミナーの費用を自分で負担しなければならないのが痛かった」とした。しかし,「そのぶん,セミナーの予習/復習に力が入る。明らかにセミナーによる知識の吸収力がよくなった」と楽しいメリットも聞かれた。
最後に,1人プログラマを目指す若者に対して「自分を信じて,誇りを持ってやってほしい」(高倉氏),「楽しく生きていければよい」(中條氏),「仕事を長いスパンで考え,10年後にこうありたいと思うなら,5年後は? 3年後は? 1年後は? 来月は?と目標を立てて考え,実行することが大事」(今井氏)と,心強い助言が得られた。
本人の希望により今井氏の写真を削除しました。 [2008/12/12 13:40]