写真●オムロンの執行役員常務事業プロセス革新本部長の樋口英雄氏
写真●オムロンの執行役員常務事業プロセス革新本部長の樋口英雄氏
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 「“顧客”にフォーカスすることが、一番重要だ」。

 オムロンのCIO(最高情報責任者)である、執行役員常務事業プロセス革新本部長の樋口英雄氏は2008年1月31日、「ITpro EXPO 2008」の基調講演でこう主張した。樋口氏は、日経情報ストラテジーが毎年選出している「CIOオブ・ザ・イヤー2007」の受賞者である(関連記事)。オムロンの業務革新をCIOとして実行した経験から、その極意を語った。

 IT(情報技術)バブル後の赤字転落から立ち直ったオムロンは、2007年度までの4年間、「事業価値の倍増」を目指して収益体質強化に取り組んできた。この初期の2004年6月に樋口氏はセンサー部門の事業部長から本社に異動してCIOに就任した。他部門と協働しながらサプライチェーンや本社部門の改革を進めて、売上高販管費率を2ポイント引き下げるのに貢献した。

 2005年度に売上高の2.4%を占めたIT費用も、システム保守・運用の中国移管など大胆な施策で大幅に引き下げた。今後は、SOA(サービス指向アーキテクチャー)を技術基盤として全面採用し、グローバルでシステムを刷新してさらに業務革新を加速させるという。

 樋口氏は、「改革を進めるには“顧客”視点で、社内の各部門と目標を共有することが重要」と強調した。顧客とは、まずオムロン製品を購入する顧客のこと。オムロンの売上高の約4割を占める制御機器部門は、少量多品種生産を得意とするため、膨大な点数の部品・製品の在庫管理が難しい。そこで樋口氏はITを駆使し、部品在庫と製品在庫をきめ細かく管理する仕組みを構築。顧客からの注文から24時間以内に配送する「24時間デリバリー」を実現し、顧客満足度を高めた。

 樋口氏は、「IT部門から見れば、社内の事業部門や本社の各部門も顧客だ」とも話した。事業部門側にとっては、IT部門が無駄な“税金”(共通費)を使っているという印象があったという。そこで、IT部門が事業部門側に提供するシステム・サービスをメニュー化し、内容に応じた“料金”を取る方法に改めたという。

 「『IT部門が経営者から権限を与えてもらえないから、社内改革が進まない』とよくいわれるが、IT部門が本当に有益なサービスを提供すれば、社内で自然と使ってもらえるし、改革も進むはずだ」と語った。