討論会に登壇した5社の代表。写真右から富士通・佐川氏、日立・渡部氏、日本HP・松本氏、日本IBM・濱田氏、NEC・山元氏、日経コンピュータ・桔梗原編集長
討論会に登壇した5社の代表。写真右から富士通・佐川氏、日立・渡部氏、日本HP・松本氏、日本IBM・濱田氏、NEC・山元氏、日経コンピュータ・桔梗原編集長
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 東京・ビッグサイトで開催している展示会「ITpro EXPO 2008」にて、「エンタープライズ・サーバーの本命は何か~ブレードや仮想化技術の実力を徹底討論」と題して、サーバー・メーカー5社の重鎮を招いた徹底討論会が開かれた。モデレータを務めた日経コンピュータの桔梗原富夫編集長は冒頭、「今後何年も使えるシステムを求めて悩むユーザーは多い。非常に大きなテーマだが、各社が考える本命について聞きたい」と宣言した。

 まずはブレードサーバーが注目されている理由について、富士通のサーバシステム事業本部本部長代理の佐川千世己氏がと議論の口火を切った。「ブレードサーバーはサーバーとネットワーク、ストレージなどをパッケージ化したシステムであり、他社との差異化を訴求できる」(佐川氏)。NECのコンピュータソフトウェア事業本部長 山元正人氏は「ミドルウエアによって、ブレードサーバー・パッケージの違いを出せる」と主張する。

 日本ヒューレット・パッカード(HP)のエンタープライズ ストレージ・サーバ事業統括執行役員の松本芳武氏は、ハードウエア上の違いもあると説明する。「標準部品を使っていても、DECのアルファサーバーの高速メモリ技術など細かい技術にも違いがある」(松本氏)。日本アイ・ビー・エム ハイバリュー・ソリューション・センター デザインセンター担当の濱田正彦氏も「複雑なハードにしないように、ケーブルの本数を減らすなど取り扱いやすくしている」と語る。日立製作所 エンタープライズサーバ事業部長の渡部眞也氏は「ブレードは冗長性を確保したり、省電力を追求するなど統合サービスプラットフォーム。そのためにも自社技術で開発するのは重要だ」と話す。

SaaSはあくまでも公共の乗り物として提供する

 「SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)や仮想化技術などエンタープライズ・サーバー領域では新しい技術が出てきた。この先どうなると考えるか」という桔梗原編集長の問いに対して、富士通の佐川氏は「SaaSは必ず来る。顧客にとっては、迅速なビジネスのためにも、インフラ運用にかける手間はない方がいい。顧客の業務を切り出し、連続性を解決できればニーズはある」と話す。「ITを所有することから、使うITに切り替わってきた。SaaSなどはその一つの解だと思う」と日立の渡部氏も共鳴する。

 「SaaSはいわばバスのような公共の乗り物。ビジネスの核には自家用車(スクラッチ・システム)のニーズもある。使い分けが重要」と説明するのは日本HPの松本氏。日本IBMの濱田氏も、「確かにSaaSはバスのようなもの」と賛同、「その延長線上に、カーシェアリングのようなイメージで、必要なときにシステムを借りられるサービスなども出てきた」とIBMの取り組みを説明した。NECの山元氏は「すべてのシステムをSaaSで提供するのは無理。共通部分をSaaSのような基盤ビジネスとして提供する」との同社の方針を語った。

一体、エンタープライズ・サーバーの本命は何なのか

 「討論会のテーマであるエンタープライズ・サーバーの本命は何か」という桔梗原編集長の質問に対して、各社は違いを打ち出しつつ回答した。富士通の佐川氏は「ブレードサーバーも伸びるだろうが、SMP(対称型マルチプロセッシング)サーバーの重要性は失われない。コアビジネス領域にはSMPサーバーを展開していきたい」と話す。一方、日本HPの松本氏は「HPの技術が積み込まれているブレードはそれ自体がマイクロ・データセンターみたいなもの。SMPサーバーと対をなす技術のように見えるが、将来的にはSMPと融合する。今のブレードの延長線上に本命の姿ある」ときっぱりとブレードサーバーの意義を主張した。

 日立の渡部氏は「現在1000社ある日立のメインフレーム・ユーザーでも、ブレードにマイグレーションするユーザー、使い続けるユーザー、システムの一部を切り出すユーザーなどさまざま。移行先としては、ブレードサーバーを積極的に提供していきたい」と、メインフレームの移行先として有力であることを強調。日本IBMの濱田氏は「毎秒10万トランザクションの大きいサーバーから、小さなブレードまでさまざまなサーバーがある。顧客の用途に応じて支えていく」とあえて本命を言及しなかった。NECの山元氏も同様で「ブレードは進化するが、大型のサーバーの必要性も残る。両方を選択できるようにしたい」と幅広い支持を強調して、討論会は幕を閉じた。