2008年1月30日の午後,「ITpro EXPO」会場内に設置されたブースに,グーグルやセールスフォースをはじめとする話題のITベンダー12社が集まった。「百聞は一見にしかず。話題のIT技術が実際に動作するところを,2時間という限られた時間の中で来場者に一気に見てもらう」(日経ソリューションビジネスの中村建助編集長)。目的は,このような前代未聞の企画を実現するためだ。
12社の内訳は,SaaS形式で業務アプリケーションを提供するソフト・ベンダー10社と,セキュリティを確保するためのサービスを提供する2社。それぞれ10分という限られた時間ながら,ソフトの特徴や売りを来場者に向けてアピールした。
業務のフル機能をネット越しに提供
最初に登壇したのは日本オラクル。CRMアプリケーション・ソフトの「Siebel」を使ったSaaSアプリケーションの動作を見せた。特に強調したのは,春に提供開始する新バージョン「リリース15」で実現する機能である。デスクトップ上で動作する小型アプリ(ウィジェット)から販売状況のレポートや商談情報の画面を呼び出せる(写真1)。リリース15ではほかにも,顧客情報に付せん型のメモを残して情報を周知させる機能など,社員間のコミュニケーションの強化につながる機能を追加する計画だ。
ネットスイートは,同社の主力サービスである「NetSuite」を紹介した。会計処理などの基幹業務アプリ,CRMアプリ,ECサイトの運営などEコマース支援用アプリといった業務に必要な一連の機能を提供していることが特徴である。デモで特に大きく見せたのは,必要な情報を一画面でまとめてみせるポータル機能(写真2)。各種アプリから必要な情報を取捨選択し表示する機能を強化し,社長,事業部長,課長など役割や担当分野に応じてきめ細かく設定できるようにした。
ラクラスは,人事関連のアプリケーションに特化したサービスを提供している。売りはワークフロー処理。ユーザー企業の業務プロセスに合わせて柔軟に設定できるという(写真3)。
グーグルは,「Google Apps」の法人向け有償サービス「Google Apps Premier Edition」をデモで見せた。電話やメールでのサポート,メールの管理機能,99.9%のサービス保証など,企業向けの機能や仕様を強化していることがポイントだ。Premier Editionならではの機能として予約機能などがある。会議などユーザー同士で共通の予約を入れる際に,会議室などのリソースについても一緒に予約できるようにしている(写真4)。
フィードパスは,メールを中核としたアプリケーション・サービス「feedpath Zebra」を実演した。Zebraは「仕事はメールのやりとりが起点」という思想に基づいて設計されており,メール・ソフトのユーザー・インタフェースに力を入れている。メールの文中に書かれている日付や相手方の氏名の上にマウス・カーソルを置くと,スケジューラやアドレス帳に登録されている情報を吹き出しで表示する(写真5)。
ウェブエックス・コミュニケーションズ・ジャパンは,Web会議アプリケーション「WebEX」を見せた。ITpro EXPOの会場と上海オフィスとの間でCADアプリケーションを共有する機能や,会議に出席しているユーザー間で操作の主導権を分かりやすく授受するための「ボール」機能などを紹介した(写真6)。
セールスフォース・ドットコムは,「Salesforce」が備える柔軟性をアピールした。データベースへの項目追加,その分析機能への反映といった一連の変更をデモで見せた。また,開発環境の「Visualforce」を紹介した。オリジナルのユーザー・インタフェースを作成できるもので,OSのデスクトップ風に作ったメニュー画面を見せた(写真7)。
グループウエア「desknet's」を開発・販売するネオジャパンは,desknet'sのAjax版を紹介した(写真8)。従来型のWindowsアプリケーションと同様の操作感覚でメールやカレンダー機能が使えることをデモで強調した。
インフォテリア・オンラインは,表計算アプリケーション・サービス「OnSheet」を見せた。SaaS形式ならではの共同作業を指向したサービスで,あるユーザーがシートに変更した内容を別のユーザーの画面にも即座に反映する,といった機能をアピールした(写真9)。有償サービスでは,「99.7%の可用性をサービス保証として打ち出している」(担当者)という。
MKIネットワーク・ソリューションズは,「Govern@nceOffice2.0」が備えるメールやスケジュール機能の操作性や利便性などを強調した(写真10)。春以降には内部統制を意識した機能強化版を投入するという。
日本SGIは,「DesktopVPN」サービスのデモを見せた。これは,外出先のパソコンから社内のマシンにインターネット経由でアクセスして遠隔操作できるようにするサービス(写真11)。パソコンと社内のマシンのそれぞれに専用ソフトをインストールする。互いが日本SGIが運用するサーバーを経由する形態だ。マシンは,基本的に画面情報だけを授受する。このため,セキュリティの強度を大きく低下させることなく,リモート・アクセスの環境を構築できるという。
ユニアデックスは,USBキーを使ったパソコン環境サービス「SASTIK III」を紹介した。USBキーを差し込んだパソコンから,サーバー上のメールや社内のイントラネット環境などに安全にアクセスできるようにするもの。キーをパソコンに差し込むとキー内蔵のプログラムが起動し,メーラーやグループウエアなどのアプリケーションが起動する(写真12)。ファイルはサーバー側からダウンロードする。キーを刺すとローカルで使ったファイルを削除するため,情報漏洩を防げるとしている。