写真●招待講演に登壇した米Gartner リサーチ部門総責任者であるPeter Sondergaard氏
写真●招待講演に登壇した米Gartner リサーチ部門総責任者であるPeter Sondergaard氏
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 2008年1月30日から東京ビッグサイトで開催している「ITpro EXPO 2008」の招待講演で米Gartner リサーチ部門総責任者であるPeter Sondergaard氏が登壇,「激変するビジネス環境にあって企業が生き残るには,IT投資を“変革”に集中投下する必要がある。ITリーダーには,企業トップの考えを理解し,どのテクノロジを追求するかを決める責務がある」と強調した。

 最初にSondergaard氏は,Gartnerが注目する10のテクノロジを挙げた。グリーンIT,ユニファイド・コミュニケーション,BPM(Business Process Modeling),仮想化2.0,Real World Web,Social Softwareなどである。これらのうちのどのテクノロジに集中投資するか,あるいは複数のテクノロジを融合させるか,それを見極めるのがITリーダーの仕事と同氏は説く。

 前提として,企業トップのニーズを理解する能力がITリーダーには求められる。そこでSondergaard氏は,企業トップを取り巻く環境を理解するためのキーワードを3つ挙げた。Innovate(変革),Industrialize(ITの工業化),Internationalize(国際化)である。

 例えばInnovateとは,インターネット技術がもたらす新しいコンセプトやビジネス・モデルを生み出すこと。「生まれたころからデジタル機器に触れ,それらを難なく使いこなすデジタル・ネイティブが社会に進出してきている。彼らはフラットで機動的な組織構造の中で,誰に管理されるともなく,オープンな環境で創造的な仕事をする」(同氏)。ITリーダーはそうした環境の中で,いち早くイノベーションの芽を見つけ出し,それを実現するためのテクノロジに投資することが求められる。

 IndustrializeはITの工業化,すなわちサービス・レベルを下げることなく,あるいは生産性を高めながら,IT予算の削減を図っていくことである。これを実現するテクノロジの一例として,米Sun Microsystemsのコンテナ型データセンター「Project Blackbox」を挙げた。標準的な運送用コンテナに,コンピュータ,ストレージ,ネットワーク・インフラ,電源,冷却装置を装備することで,初期費用は従来の100分の1,1平方フィート当たりの設置面積コストは5分の1,消費電力は20%削減できるというもので,ITの工業化の先進例として注目されている。

 Internationalize(国際化)については,世界的な視野でコンピューティング・インフラの整備を考えるべきと指摘した。インド,中国,ブラジル,ロシアなどのBRICS諸国で新技術の導入や展開が加速しており,新しい技術を安く開発し,安く展開することで大きなビジネス・メリットが生まれる。「ある北欧の企業は数年前にロシアにアウトソーシングの拠点を置いていたが,今やロシアに本社を構え,機能が逆転してしまった。大切なのは,ドメスティックな視野を超え,グローバルにビジネスを考える世界観を持てるかどうかだ」とSondergaard氏は主張する。

 「どのテクノロジを選ぶかは,企業トップが何を目指すかによって決まる。ITリーダーは企業トップの考えを理解し,すぐに行動を起こすべきだ」と会場にエールを送った。