写真●X-over Development Conferenceでの対談<br>左が日立製作所の石川貞裕氏,右がアイ・ティ・イノベーションの林衛氏。
写真●X-over Development Conferenceでの対談<br>左が日立製作所の石川貞裕氏,右がアイ・ティ・イノベーションの林衛氏。
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 1月30日に開幕したITpro EXPO 2008では,フォーラムとしてソフトウエア開発をテーマにした「X-over Development Conference」も開催している。「品質は上流から作りこむ」と題したセッションで,日立製作所プロジェクトマネジメント統括推進本部の石川貞裕担当本部長とアイ・ティ・イノベーションの林衛代表取締役社長が対談した。要件定義以前の工程での間違いがテスト工程以降に品質問題として噴出するという問題意識を提示し,間違いの見極め方や対策を披露した。会場は100人を超える聴講者で満席となった。

 「開発工程や成果物を定義しているプロジェクトは多い。しかし,成果物の具体的な内容や体系,各工程の完了基準まで定義しているプロジェクトは少ない」。林氏は上流工程で品質が崩れる原因の一つをこう指摘した。例えば,要件定義工程の完了基準が決められていなければ,要件定義のドキュメントの品質が確保されないまま次の工程に移ることになりかねない。その結果「テスト工程で力ずくで品質を確保しようということになる」(林氏)。だが,それは容易なことではない。

 石川氏は,上流工程で表れる品質悪化の兆候の例を次のように説明した。「“それは詳細設計で明らかにします”という言葉が出たら,要注意。要件定義で明らかにすべきことは,要件定義の中で明らかにしなければいけない」と指摘した。

 特に,データの定義がなおざりにされることが多いという。画面や帳票の設計だけがやたら進んでいて,それ以外を後回しにしようというプロジェクトがあるが,そういう作り方は危険なのだという。

 こうしたことが起こる背景には,技術者のスキルの問題もある。

 「きちんとデータを定義し,データベースを設計できる技術者が足りていないのではないか」(林氏)。品質管理というと,プロジェクト・マネージャの責任に帰せられる印象があるが,実際に設計するのは技術者。「技術者はメンタルを変えないといけない。情報システムは複雑になっている。20年前と同じ開発手法は今は通用しない。開発しようとしている情報システムに正対した開発手法なのかどうかを疑ってみるべきだろう」(林氏)。