IPA(情報処理推進機構)は2008年1月29日、2007年度の下期事業について、報道機関向け説明会を開催した。説明会では個別事業の成果として、IT人材市場動向予備調査の結果などが報告された。03年から利用できるようになったITスキル標準(ITSS)がITベンダーに浸透してきた一方で、06年から始めた情報システムユーザースキル標準(UISS)は「残念ながらまだ普及しているとは言えない」(IPAの丹羽雅春IT人材育成本部ITスキル標準センター長)状況が明らかになった。

 IT人材市場動向予備調査は、IPAが08年度から本格実施する調査に先立って、IT人材の総数やスキルレベル、人材の不足具合などを調査したもの。その結果、ITベンダーでITSSを「現在利用している」と回答した割合は28.3%で、「現在利用を検討している」が27.5%、「必要性を感じているが検討には至っていない」が27.2%となった。「ITSSを使わなければと感じているITベンダーが8割に達し、浸透しているといえるだろう」と丹羽ITスキルセンター長は分析する。

 一方、UISSを「現在利用している」と回答したユーザー企業は1.7%にとどまった。「現在利用を検討している」も10.1%、「必要性を感じているが検討には至っていない」も38.4%だった。丹羽ITスキル標準センター長は「JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)とともにUISSの普及に努めたい」と話す。

 新卒採用に関する課題では、「業界の仕事のイメージが良くない」との回答が最も多く、46.5%だった。IPAの藤原武平太理事長は、「由々しき事態だ。IT業界は3Kだ、いや5Kだ、いや7Kだと、根拠のない話が面白おかしく言われているためだと感じている。実際はITエンジニアの3分の2が仕事にやる気を感じているという調査結果もあるし、実際に夢のある仕事だ。プラスの面をもっと広めていかなければならない」と話す。

 そのほか、日本のIT人材は102万9460人(ITベンダーが76万1070人、ユーザー企業の情報システム部員が26万8390人)と推定できること、ITベンダーの約9割が「IT人材の量・質ともに不足している」と感じていること、企業が大学教育に期待するものとして1位に挙げる「システム・ソフトウエアの設計能力」が、大学が重視する教育内容では7位であることなどが明らかになった。調査はITベンダー2000社と上場しているユーザー企業3000社を対象として、07年9月に実施。ITベンダー357社(回答率は17.9%)とユーザー企業237社(同7.9%)から回答を得た。