アイシロン・システムズは2008年1月29日,クラスタリング接続によって容量と性能を拡張できるNAS「Isilon IQ」の新機種として,CPUを高速化した「Xシリーズ」を出荷した。ベースとなるPCサーバーのハードウエア性能を向上させたのは,今回が初めてとなる。価格は,Isilon IQ 1920xが3ノードの最小構成で1749万円(税別)から。開発会社は,米Isilon Systems。
Isilon IQは,クラスタリング接続できるNAS(ファイル・サーバー専用機)である。動画や文書など大容量のファイル・データを扱う企業に向く。複数のNASをサーバー間接続したクラスタ全体を,単一のファイル・システムとして運用できる。NASノードをサーバー・クラスタに追加することにより,クラスタ全体のストレージ容量を増やしたり,あるいはファイル・アクセス速度を向上させることが可能。さらに,クラスタ全体で,個々のNASノードを要素とするRAID構成を採れる。最小3ノードから最大96ノードまで拡張できる。
ベースとなるハードウエアは高さ2Uのラックマウント型PCサーバー機であり,ギガビット・イーサネットまたはサーバー間インター・コネクト用インタフェースであるInfiniBandを用いて,サーバー機同士を接続する。この上で,OneFSと呼ぶ分散ファイル・システム用の専用OSが稼働する。
製品ラインアップは,4種類ある。
(1)基本となる製品は,高さ2UのPCサーバー機にハード・ディスクを内蔵したNASノード。全部で5モデルある。5モデルともにベースとなるPCサーバー機の部分は共通であり,モデル間の違いは搭載するディスク容量だけである。1台で最大1.92Tバイトを搭載するIsilon IQ 1920xから1台で最大12Tバイトを搭載するIsilon IQ 12000xまで5モデルで構成する。
Isilon IQ 1920xのようにディスク容量が少ないモデルは,容量を犠牲にする代わりにクラスタ全体のファイル・アクセス速度を高めたい場合に有効。一方,Isilon IQ 12000xのように搭載ディスク容量が大きいモデルは,ファイル・アクセス速度を犠牲にする代わりに容量を増やしたい場面で有効である。単純に言って,ストレージ容量は搭載ディスク容量で決まり,ファイル・アクセス速度はPCサーバー機の台数で決まる。
今回出荷するXシリーズは,この5モデルの新機種である。5モデルとも既存製品のCPUを従来のIntel Xeon(3.2GHz)からデュアルコアのXeon 5100シリーズ(3GHz)に変更した。これにより,性能が最大で60%高まったとしている。CPUの変更(TDPは80ワット)や電源の変更などにより,消費電力も削減した。旧機種名のIsilon IQ 1920に対する新機種名のIsilon IQ 1920xなど,製品名称の最後に付く「x」が,今回の機種を表している。1月29日現在,この5モデル以外の機種はハードウエア刷新の対象ではない。
5モデルの価格は以下の通り(いずれも3ノード構成時)。Isilon IQ 1920xは5.76Tバイトで1749万円(税別)から。Isilon IQ 3000xは9Tバイトで2097万円(税別)から。Isilon IQ 6000xは18Tバイトで2968万円(税別)から。Isilon IQ 9000xは27Tバイトで3325万円(税別)から。Isilon IQ 12000xは36Tバイトで3821万円(税別)から。
(2)製品ラインの1つである「Isilon IQ Accelerator」は,ディスクを搭載しないNASノード。Isilon IQのクラスタにIsilon IQ Acceleratorを追加することで,クラスタのファイル・アクセス速度を高めることが可能になる。ストレージ容量はそのままに,クラスタを構成するPCサーバー機の台数を増やすことになるため,結果としてクラスタのファイル・アクセス速度が高まる。
(3)PCサーバー機を備えず,ディスク容量を拡張する目的に特化した製品ラインが,「Isilon EX」。Isilon EX 6000からIsilon EX 12000まで,搭載ディスク容量に応じて3モデルを用意している。それぞれ,NASノードであるIsilon IQ 6000からIsilon IQ 12000までの大容量ノード3モデルのストレージ容量を2倍に拡張する外付ストレージという位置付けである。NASノードとの接続はSASインタフェースによる直接接続となる。
(4)Isilon IQのNASノードのハードウエア性能を簡略化した高さ1Uのエントリ機種が,「Isilon IQ 200」。特徴は,サーバー間接続用にInfiniBandが選べないギガビット・イーサネット専用機であることと,高さ1Uのため内蔵ディスク数が4台と少ない点,最大ノード数が24ノードと少ない点,他の上位機種と混在させて使うことができない点,など。CPUなどPCサーバーの基本部分は,Isilon IQ 200が登場した2007年1月時点では他の上位機種と同じである。
■変更履歴 8段落目の価格説明に際し,各モデルの搭載ディスク容量の表記に誤りがありました。各モデル1台の搭載ディスク容量は,IQ 6000xが6Tバイト,IQ 9000xが9Tバイト, IQ 12000xが12Tバイトとなります。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2008/01/29 15:55] |
■変更履歴 8段落目の価格説明に際し,3ノード時のIsilon IQ 6000xの価格を3968万円(税別)からとしていましたが,2968万円(税別)からの誤りです。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2008/01/29 20:01] |