総務省は2008年1月25日,ユビキタス特区として22の対象プロジェクトおよび地域を決めたと発表した(発表資料)。このうち七つが国の予算支援を行うものである。発表では,対象地域とプロジェクトの概要,利用周波数などが示されている。内容としては,ITS,ポストワンセグ,LTE(3GPPが策定の第3.9世代移動通信システム)などが多かった。

 ITS関連では,UHF帯や5.8GHz帯を利用した車車間通信や路車間通信に関するものが目白押しである。合計五つのプロジェクトがあり,提案組織として多くにトヨタ自動車およびその関連会社が名前を連ねている。また,マツダは,モバイルWiMAXなどを活用したサーバー型運転支援サービスの開発および実証を行う予定である。

 ポストワンセグに関連するものが,「通信・放送連携」の項目にずらりと並ぶ。いずれも,2011年7月のアナログ放送終了によって空く帯域を利用した新しい携帯端末向け放送をにらんだものであり,有力周波数であるVHFハイバンドを含んである。例えば米Qualcommが開発を主導したMediaFLOを推進するソフトバンクモバイルの子会社である「モバイルメディア企画」(VHF9または11チャンネル,UHF30チャンネル),KDDIなどが出資する「メディアフロージャパン企画」(VHF11チャンネル)である。MediaFLOは米国で実用化されているがUHFを利用している。特区の実験では国内での事業化を目指してVHF帯利用時の評価に力が入りそうだ。MediaFLOの関連では,松江市で同技術を利用した多様な受信機器を対象とした情報配信サービスの開発・実証も予定されている。

 このほかエフエム東京などは,VHF帯7チャンネルを利用してISDB-Tsbによる各種の実験を行う。さらに次世代ワンセグ放送としては,複数のセグメント放送を連結して配信する技術の実証も北海道で計画されている。ここでは,デジタル放送を直接受信できない地域や空間における展開の可能性も実証する計画。

 ワイヤレスブロードバンド関連では,NTTドコモなどのグループと,ソフトバンクモバイルがLTEで名乗りを挙げた。いずれも1.5GHzを利用する。同関連では,いわゆるVHF帯を利用した公共・公益分野の自営通信を推進するグループも10MHz幅を使った実験を進める計画だ。

 なお,総務省によると,今回はあくまで第一次決定であり,現在さらに提案内容を詳しく評価している案件があるという。第二次決定で,さらにユビキタス特区が追加されそうだ。