角川グループホールディングスは1月25日,YouTubeでの新規事業を開始すると発表した。動画識別技術や広告配信を活用した事業などを行う。YouTubeに公式ページを開設するほか,優秀なクリエータを発掘するためのキャンペーンを共同で展開する。角川グループは2007年からGoogleの画像識別技術の実証実験に参加してきたが,一定の成果を得たとしている。
ブランドチャンネルを2月上旬にオープンする。エンターテイメントチャンネル,ムービーチャンネルの2つ。「できるだけ多くの人に見てもらい,DVDの販売につなげていく」(角川デジックス 代表取締役社長 福田正氏)。
VideoIDと呼ばれる動画識別技術については,オリジナル動画と,マッチングする可能性があるファイルを数千作成し,あらゆるパターンで照合を検証した。「まだベータ版だが,世界中で50のコンテンツ企業と協業しており,非常にいい結果を得られていると感じている」(米Google コンテント担当副社長 David Eun氏)。角川デジックス 福田氏は「90%以上は認識できている」という。
VideoIDにより著作権者は,動画を削除するか公開を許可することができる(写真1)。公開を許可した動画には「適」マークが付き,バナー広告や,スケルトン・アドと呼ばれる広告が画面上に掲載される。スケルトン・アドは,動画上に半透明で表示され,視聴者がそれをクリックすると動画広告が表示される(写真2)。動画広告が終了すれば,本来の動画に戻る。広告収益の目標および配分については「契約上,公開しないことになっている」(角川デジックス 福田氏)。
「ただ見られているだけでは,お金にならないと思っていた。しかし,きちんとお金が支払われ,著作権者に戻っているという仕組みであれば,プラットフォームになるのではないか。技術は日進月歩で進歩する。われわれもそれに遅れないように新しい仕組みを作っていく」(角川デジックス 福田氏)。
角川グループホールディングス 代表取締役会長兼CEO 角川歴彦氏(写真3)は「角川グループは,国内の著作権法の遵守を求めてきたが,Googleの首脳陣が角川の要求を真摯に受け止めてくれた。YouTubeは世界の共通語になり,日本発コンテンツが世界に広がることに大きく貢献している。検索連動型広告が収益をもたらすことを期待している」と提携への期待を表明した。