写真1 物理速度400Mビット/秒のPLCモデムのデモ内容を説明するスペインDS2のホルヘ・ブラスコ・クラレット社長兼CEO
写真1 物理速度400Mビット/秒のPLCモデムのデモ内容を説明するスペインDS2のホルヘ・ブラスコ・クラレット社長兼CEO
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写真2 実効速度は250Mビット/秒<br>写真左から,400Mビット/秒の試作機,200Mビット/秒の現行機,開発中の100Mビット/秒機,IEEE 802.11n draft 2.0無線LAN,HomePlug AV,HD-PLCの実効速度
写真2 実効速度は250Mビット/秒<br>写真左から,400Mビット/秒の試作機,200Mビット/秒の現行機,開発中の100Mビット/秒機,IEEE 802.11n draft 2.0無線LAN,HomePlug AV,HD-PLCの実効速度
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 スペインのDS2は2008年1月24日,物理速度400Mビット/秒の高速電力線通信(PLC)モデムの試作機を東京・赤坂のスペイン大使館内で披露した(写真1)。従来の200Mビット/秒製品と相互接続性を保ったまま400Mビット/秒に高速化する技術を開発。2009年内の製品化を予定する。

 デモの内容は,ビデオデッキ大の試作機を2台使い,それぞれを電源タップを介して接続して通信するというもの。高周波利用を想定しない実際の電力線を使わない理想環境下ながら,UDPパケットを流し続けるテストで250Mビット/秒前後の実効速度を達成してみせた。

 比較対象として,無線LANや現行製品のデモも実施。現行の200Mビット/秒製品,2008年第2四半期の出荷を予定する100Mビット/秒製品,300Mビット/秒のIEEE 802.11n draft 2.0準拠の無線LAN製品,200Mビット/秒のHomePlug AV準拠のPLCモデム,190Mビット/秒のHD-PLC準拠のPLCモデムに比べて頭一つ抜けた速度をアピールした(写真2)。ただし比較機はいずれもイーサネット側が100BASE-TX準拠の製品で,試作機以外のPLCモデムは海外製品に比べて15M~30MHzの信号出力が抑えられている日本の規制値に準拠している点は割り引いて見る必要がある。

技術の詳細は明らかにせず

 400Mビット/秒を実現する技術については「競合他社との兼ね合いで明らかにできない」(社長兼CEO)とした。一般的には,伝送速度を高めるには周波数帯域を広げる,搬送波当たりのビットレートを高める,高精度な誤り訂正符号を採用する,といった手法がある。DS2は,PLCで利用可能な周波数帯の動向を見ながら,高速化技術を絞り込む計画。「米国では100MHzまでPLCの帯域を拡張できるが,今のところヨーロッパや日本,韓国などでは30MHzまでに限定される。製品化に当たって400Mビット/秒の達成がどの程度の帯域拡張を伴うかは未定」と説明する。

 DS2は,UPA(Universal Powerline Association)方式のチップを開発したPLC専業メーカー。集中管理や信号の中継機能が特徴で,企業向けのPLCシステムの多くが採用している。国内では,住友電気工業(関連記事)やNECグループのネッツエスアイ東洋(関連記事)などが企業向け,ロジテック(関連記事)やバッファロー(関連記事)などが個人向けのUPA準拠のPLCモデムを出荷中だ。