「AV-Test.org」が入手したウイルスサンプルの種類の推移
「AV-Test.org」が入手したウイルスサンプルの種類の推移
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 セキュリティベンダーの米サンベルトソフトウエアは2008年1月24日、ドイツのコンピューターウイルス検査機関「AV-Test.org」のデータを基に、年ごとに出現したウイルスの種類を集計し発表した。それによると、2007年には過去最高の549万960種類を確認(図)。2006年は97万2606種類だったので、5倍以上になった。

 AV-Test.orgが入手した、年ごとのウイルスサンプル(検体)の種類は以下の通り。ここでは、このサンプルの種類を、年ごとに出現したウイルスの種類としている。

1985年564種類1997年13万7716種類
1986年910種類1998年17万7615種類
1987年389種類1999年9万8428種類
1988年1738種類2000年17万6329種類
1989年2604種類2001年15万5528種類
1990年9044種類2002年19万9049種類
1991年1万8384種類2003年17万8825種類
1992年3万6822種類2004年14万2321種類
1993年1万2287種類2005年33万3425種類
1994年2万8613種類2006年97万2606種類
1995年1万5988種類2007年549万960種類
1996年3万6816種類 

 2004年までは10万台だったが、2005年に30万、2006年には90万を突破。そして2007年には、549万960種類のウイルスが確認された。

 この理由としてサンベルトソフトウエアでは、オリジナルのウイルスをわずかに変えた亜種(変種)が多数作られるようになっているためと分析する。AV-Test.orgでは、同じ種類のウイルスかどうかを、ウイルスファイルのハッシュ値で判断する。ハッシュ値とは、ある関数(この場合にはMD5)を使って計算される、ファイル特有の固定長データのこと。ファイルの中身が1ビットでも異なれば、ハッシュ値は変わってくる。

 このため、「549万960種類」といっても、それらは全く異なるウイルスではなく、ファイルの中身を一部だけ改変した亜種が多数を占めているという。亜種を作る目的は、ウイルス対策ソフト(セキュリティ対策ソフト)の回避。現在では、亜種を作成するツールはインターネット上に多数出回っているので、オリジナルのウイルスさえ持っていれば、スキルのないユーザーでも亜種を簡単に作ることができる。

 以上のような状況からサンベルトソフトウエアでは、対策ソフトメーカーなどのセキュリティベンダーには、今までとは異なる対応が求められるだろうとコメントしている。セキュリティベンダーの多くは、ウイルスを自動的に解析するシステムを導入しているものの、新種ウイルスの詳細解析など、重要な作業については人手に頼らざるを得ない。このため、数名の研究者だけでウイルス解析しているようなベンダーは、現在のウイルスの脅威に対抗することは難しいとしている。できるだけ多人数のチームで臨む必要があるだろうと結んでいる。