米Microsoftは2008年1月21日,次期Webブラウザ「Internet Explorer(IE)8」でWeb標準技術にどう対応するかを公表し,IEのレンダリング・エンジン大幅変更でも「既存のWebを壊さない」という方針を維持した。IE 8の互換モードは,IE 7の2種類から一つ増えて3種類になる。そのうちの一つは,現行Web標準に対する整合性が従来よりも向上する(関連記事:Microsoft,次期Webブラウザ「IE 8」のWeb標準準拠モードは非デフォルトに)。

 一つだけ問題がある。Microsoftによると,厳格性を増した新たな標準モードはあまりに多くの既存Webサイトで互換性が維持できなくなるので,IE 8のデフォルト動作モードにしないという。MicrosoftのIEプラットフォーム・アーキテクトであるChris Wilson氏はブログ記事で,現在すでに5億人のIEユーザーがおり,「数十億」のWebページがIE 6とIE 7で動いていると書いた。「このことから,IE 8で(旧IEと)互換性のないWeb標準技術に対応するなど過ちになってしまう」(Wilson氏)。

 Microsoftの「既存のWebを壊さない」方針は,製品アップグレードで顧客が被る非互換問題を最小限に抑えようとする同社の長期計画から自然発生した。ただし今回のMicrosoftの対応について,開発者コミュニティは保守的過ぎると懸念している。MicrosoftがIE 8で互換性を維持するために採った方法は極めて複雑と思える。厳格な標準モードを使うには,Webページにある特定のタグを追加する必要があるのだ。

 その結果,Web標準への対応が複数階層で行われることになった。IE 8は,IE 6およびそれ以前のIEと同様の方法でレンダリングする「quirksモード」,IE 7ベースの「standardsモード」,そして厳格性の増した新しいstandardsモードを搭載する。新standardsモードでレンダリングするには,Webページを変更しなければならない。

 IE 8の詳しいリリース・スケジュールは,もう少し待たないとわからない。Microsoftは2008年上半期にIE 8のベータ版を出すとみられるが,最終版はいつになるか不明だ。