喜久川氏。「中国PHS事業者との協業を進めており、今回の新製品もその一環」
喜久川氏。「中国PHS事業者との協業を進めており、今回の新製品もその一環」
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「XPLATE(テンプレート)」。中国PHS版SIMカードである「PIM」を挿して、現地の電話番号でも使える。ただし中国国内の他都市でのローミングはできない
「XPLATE(テンプレート)」。中国PHS版SIMカードである「PIM」を挿して、現地の電話番号でも使える。ただし中国国内の他都市でのローミングはできない
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 ウィルコム 代表取締役社長の喜久川政樹氏は、同社のPHS端末や組み込み機器などに使用しているカード型PHSモジュール「W-SIM」を、中国PHS市場向けに展開する準備を進めていることを明らかにした。2008年1月21日に開催した新製品発表会において、日経パソコン記者の質問に答えた。

 喜久川氏は、「(中国北部でPHS事業を展開している)中国網絡通信と共同で、W-SIMの中国での活用について検討を行っている。また、中国でのパケット通信サービスの導入に向け、近(取締役 執行役員副社長の近義起氏)を中心に取り組みを進めている」と語った。

 W-SIMは、SDカードを一回り大きくしたサイズのモジュールで、内部に通信制御LSIやアンテナなど、PHSの音声/データ通信にまつわる回路を集積している。W-SIMスロットを備えた機器に挿入することで、その機器で音声通話やデータ通信が可能になる。機器メーカーにとっては、W-SIMを採用することで通信関連の開発作業を大幅に省力化できるメリットがある。

 中国ではPHSが「無線方式の市内電話」として位置付けられており、各地の固定通信事業者によりサービスが展開されている。通話料が携帯電話より安いといったメリットがあり、ピーク時は約9300万契約までユーザー数を延ばしていた。しかしここ1~2年は携帯電話に押され、2007年11月現在で8688万契約まで減少している。W-SIMの導入により、機器メーカーが通信機能を組み込んだ機器を容易に開発可能にすることで、こうした減少傾向に歯止めをかけたい考えだ。

 同日の発表会では、セイコーインスツル製PHS端末「XPLATE(テンプレート)」を、2008年2月下旬に発売することを発表した。同製品には、中国国内でもPHS端末として使用できるよう、ICチップ「PIM」のスロットを設けている。中国のPHSでは、携帯電話におけるSIMカードと同様、電話番号などの契約情報をPIMに書き込んで販売しており、ユーザーは別途購入したPHS端末にPIMを挿入することでPHSサービスを利用できる。XPLATEは日本国内ではウィルコムのPHS端末として使えるほか、中国渡航時に中国電信/中国網絡通信でPIMを購入すれば、現地のPHSサービスが利用できる。

 なお、ウィルコムと中国電信/中国網絡通信との国際ローミングについては、協議は続けているもののサービス提供開始の時期は未定という。「中国電信、中国網絡通信の2社だけではなく、各省・直轄市にある子会社のそれぞれとローミング契約を結ばなければいけないため、時間がかかっている」(ウィルコムの説明員)としている。